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【コラム】日本の地方に行って分かること(上)

 東京の南西にある伊豆半島に「天城山」というさほど高くない山がある。川端康成の小説『伊豆の踊り子』の舞台として有名だ。煩もんする青春の旅程を描いていることから、昔から20代の若者が悩みを抱き巡礼する場所として知られている。

 先週末、天城山近くの旅館を訪れた。「大滝」という勇壮な滝の下流に、露天風呂のあるちょっとした規模の旅館だ。ちょうど10年前にもこの旅館で一晩過ごしたことがある。「青春の苦悩」という年齢ではないので、今回はストレス解消という気持ちで訪れたが、「来なければよかったのに…」と後悔しながら東京に戻った。

 水道の蛇口・洗面台・おぜん…何一つ変わっていなかった。旅館の部屋のテレビも、出入り口の鍵も10年前とまったく同じだった。しかし、昔の香りをとどめておくべきものは変わってしまっていた。部屋の中に夕食のおぜんを運んでくれる誠意のこもった仲居さんの接客は、宿泊客全員を食堂に集めるホテル式ご都合主義に取って代わった。1ぜん1ぜんご飯をよそってくれた着物姿のおかみの役割は、ワゴンをガラガラと押しながら食器を突き出すエプロン姿の女性がしていた。

 一番がっかりしたのは、10年前に大変感動した「あること」が行われていなかったこと。翌日、玄関を出るとき見送りがなかったのだ。前の日、旅館に着いたときバッグを持ってくれた50代の男性も、旅館の看板をぞうきんでふいているだけだった。何回も後ろを振り返ってみたが、閑散としていた。次の客が出るところを見たら、まったく同じだった。10年前は姿が見えなくなるまで手を振り続けてくれたのに。

東京=鮮于鉦(ソンウ・ジョン)特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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