【萬物相】バージニアで見た「ゆるしの心」
それから22年の歳月が過ぎたある日、誘拐犯が自首した。犯人はクリスの父親の下で働いていた元従業員で、解雇されたことをうらんで犯行に及んだという。犯人は緑内障で失明し、骨と皮ばかりとなった77歳の老人だった。もはや死期が近い状態だった。クリスは体の力が抜けるような気がした。
老人はクリスの手を握りしめ、「過ちを犯した。本当に申し訳ない」と謝罪した。これに対し、クリスは「もういい。すべて水に流す」と答えた。
1985年に米国の陸軍曹長ダニエル・コールマンは妹が銃で撃たれて死亡したという知らせを聞き、ロスアンジェルスの現場に駆けつけた。警察は「ほかにも殺人事件は多い」とし、4日で捜査を打ち切った。ダニエルは「自分がかたきを取る」とし、犯人の足跡を追って全国を駆けめぐった。犯人への憎悪は、彼の体と心を徹底的に破壊した。2年半後、ダニエルは結局、妹の隣の墓に葬られる身の上となった。
1999年4月に米国コロラド州のコロンバイン高校で2年生エリック・ハリスとディラン・クレボルドが生徒12人と教師1人を殺害して自殺するという銃乱射事件が発生した。その後の追悼式の会場には、「非業の死を遂げた13人の被害者にだけ花と祈りをささげる。2人の悪魔は含めない」というポスターがはられた。しかし校庭の丘には15人全員の墓が建てられた。だが一部の被害者の遺族は「殺人者を同じように扱うのはおかしい」とし、2人の墓から十字架を引き抜いてしまった。
バージニア工科大の広場で銃乱射事件の被害者のための追悼式が開かれた。チョ・スンヒ容疑者の碑銘も33人のうちの4番目に置かれた。そこに事件の3日後から花や手紙などが寄せられ始めた。「あなたが必要としていた支援を受けられなかった事実を知ったとき、本当に悲しかった」、「どんなに苦しかったことだろう。独りで苦痛の中にいたあなたに、一度も手を差し伸べられなかったわたしをゆるしてほしい」といった内容だった。
バージニア工科大のインターネット新聞にはチョ・スンヒ容疑者の家族を慰める投稿が載せられている。チョ・スンヒ容疑者の姉が謝罪文を発表したことについて、「あなたも愛する人を失った」と慰めの言葉をかける内容もあった。また他の投稿には「わたしはチョ・スンヒさんの家族のために祈る」とあった。
今月20日正午、大学の広場に死者を悼む鐘の音が33回響き渡った。そして33個の風船が空に舞い上がった。チョ・スンヒ容疑者の魂も今や、15年の異国生活の間、胸を押しつぶしてきた大岩のごときわだかまりをも溶かすような仲間たちのゆるしを得て、安らかに天へ上っていくものと信じたい。
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