李栄薫教授「韓国人の儒教原理主義が歴史を歪曲」
李栄薫ソウル大教授インタビュー(2/4)
こうして今回出版される『大韓民国の話』は、朝鮮の滅亡、日帝による収奪、親日派、慰安婦、大韓民国の建国、反民特委(反民族行為特別調査委員会)など、民族主義と関係するデリケートな論点を正面から取り上げている。その骨組みとなったのは、脱民族主義の視点から『解放前後史の認識』を批判、克服しようとした『解放前後史の再認識』(チェクサラン)だ。
そして李栄薫(イ・ヨンフン)教授は、韓国の指導者らが韓国の近現代史に否定的な歴史認識を持つ背景として性理学(儒教の一派。朝鮮王朝では絶対的権威を誇った)の思想的影響を挙げた。
「性理学は一種の原理主義哲学であり、あらゆるものの因果関係を一つの要因で説明しようとする。その典型的な例が、“これまでの60年間、韓国政治が混乱を極め、社会が腐敗したのは、親日派を清算できなかったため”という主張だ。こうした原理主義的思考に陥っている知識人らが社会の摩擦と対立をさらに激しくしている」
—それは、21世紀の韓国人が19世紀の性理学的名分論にとらわれているという意味か。
「韓国人は自ら伝統を否定し、批判した経験がない。韓国の伝統を批判した日帝が敗亡し、それにより伝統自体が美化され、産業化の始まりとともに民族主義的に利用された。性理学は、人間を道徳的存在と見なし、社会を道徳原理が支配する場と見なしている。これは、西洋的意味での実用主義や経験主義、多元化された思考とはかけ離れている。ここ数年間、韓国社会が深刻な摩擦と対立を経験したのも、余りに観念的かつ道徳的な性理学的思考からもたらされたものではないかと思う」
—韓国史学界では、朝鮮王朝が滅亡したのは「凶暴な盗賊」(日本)のせいであり、「善良な主人(朝鮮王朝)」のせいではないと主張している。李栄薫教授はこうした歴史認識に対し、「歴史から何も学ぼうとしない無責任な姿勢」と批判しているが。
「朝鮮王朝は19世紀には既に事実上解体されていた。人口の増加により火田民(焼き畑農業を行う農民)が増えたため山林は荒廃し、少し雨が降っただけでも土砂が田畑に押し寄せ、農業生産力は減少した。18世紀中ごろに比べ、農業生産力は19世紀末にはほぼ3分の1の水準にまで衰退した。こうした農業生産力の衰退の影響で1850年代以降にコメ価格が暴騰し、それが政治的・社会的混乱へとつながり、それに対し朝鮮王朝は何ら有効な対策を打ち出すことができなかった」
金基哲(キム・ギチョル)記者
写真=キム・ボベ客員記者
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