【萬物相】新時代の「偽装就職」
90年代初めまでのことを言えば、学歴を低く偽る「偽装就職」者はたいてい労働運動の活動家だった。第5・第6共和国時代(全斗煥〈チョン・ドゥファン〉大統領就任の81年から現在まで)に、警察や安全企画部に配布された「偽装就職者判断の要領」という資料がある。ここには「入社志願書の字が達筆、眼鏡をかけていたり肌がきれいで、流行の服を身につけている者、質問にすらすらと答える者は疑わしい」と書いてある。また、「偽装就職者は周囲によく見られようと一生懸命働くため、入社して3カ月もたたないのに有能さを発揮する者がいれば、疑うべき」という注意書きもある。
現代自動車の全州工場が今年3・4月に採用した高卒生産職の新入社員400人のうち、4年制大学を卒業していながらも学歴を高卒と偽り志願した5人が摘発され、1カ月後に解雇された。当事者たちは「ずっと働かせてほしい」と懇願、同社の一部からも「昨今の就職難はよほどひどいのだろう」と同情論が出ていた。しかし、会社側は「4年制大卒者を受け入れれば、高卒の人々が被害を受ける」と処分を断行した。
現代自の生産職の初任給は年俸で3000万ウォン(約364万円)。夜勤すれば3500万ウォン(約425万円)から4000万ウォン(約485万円)になる。また、生産職はリストラ対象にもならず、まじめに働けば定年まで保障されている。そのため常にリストラの危険にさらされている大卒事務職をうらやましがる必要はまったくない。解雇された5人の中には地元の名門国立大学を卒業した人もいた。一方、2005年末、同じ現代自系列の起亜自動車・光州工場の生産職採用でも、労働組合幹部が志願者8人から1億8000万ウォン(約2200万円)を受け取り就職させていたことも明らかになっている。
2000年にある人が大卒という学歴を低く偽り、自動車部品会社に就職し偽装が発覚、解雇されたため訴訟を起こした。この人は「学習雑誌の訪問教師やビデオ販売などをしていたが、38歳になり仕方なく学歴を偽った」と訴えた。しかし、裁判所は「自ら進んで会社を騙した」として原告側の敗訴を言い渡した。韓国では15歳から29歳までの986万人のうち、正式な統計上の失業者は7%に当たる70万人だが、就職を放棄している122万人のニート(働かず、教育も訓練も受けていない若年層)を合わせれば実際の失業者は200万人近い。米大学の博士号を偽造したシン・ジョンア氏の事件の裏には、こうした就職難による偽装就職があるのもまた事実なのだ。
文甲植(ムン・ガプシク)論説委員
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