「脱落=死」脱北者の中国脱出に密着
【特集】天国の国境を越える

- 2007年8月21日、脱北者たちが中国とラオスの国境にある雲南山地を越えている。/写真=ハン・ヨンホ・ディレクター
2007年8月21日午前0時30分、中国雲南省の雲南山地のふもと。中国人の案内人が、暗闇の中から現れた。「荷物を持ってついて来い」。イ・ヨンファさん(19)=仮名=はつばを飲み込んだ。全財産をはたいて脱出のための費用を調達してくれた母親を思い出した。わずか数日前に北朝鮮を脱出し、まだ中国の隠れ家にいる弟の顔も浮かんだ。「必ず生き残らねば」と決心した。一行は全部で11人。その内訳は中国国内に隠れていた脱北者8人、取材班二人、案内人一人で、年齢は8歳から57歳まで、幅広い年代の人がいた。5日前の16日、脱北者たちは中国東北部の瀋陽に集まり、北京を経て雲南省の昆明まで、バスや列車を乗り継いで移動し続けた。あとは目の前の山さえ越えれば、自由の身になる。
バスは1時間ほど舗装されていない道を走り、中国の領土の最果てに到着した。一行はバスを降りると、暗闇の中に入っていった。山道を進む間、案内人は一度も後ろを振り返らなかった。「脱落したら置いていかれるだけだ」。ヨンファさんは唇をかんだ。「捕まったら毒薬を飲んで死ぬしかない」と。
木々が生い茂った山道は、前を見るのも困難だった。案内人が懐中電灯を配りながら、「何か音がしたら消せ。国境警備隊に見つかって撃たれるから」と告げた。2時間以上歩いたところで、目の前に川が現れた。「ここから川沿いに上っていく」。川の水が足首まで来たかと思ったら、あっという間に首まで水に漬かった。おぼれかけ、とげが刺さり、ヒルに血を吸われた。さらに深い森の中に入り、抜けるまでに3時間もかかった。そのとき突然大雨が降ってきた。
案内人がビニール袋を配り、「少し休もう」と言った。一行はビニール袋をかぶって仮眠を取った。ヨンファさんの体は震えていた。30分後、雨がやんだ。つかの間の休憩は終わり、再び石だらけの山道を上っていくうちに、ようやく太陽が昇ってきた。朝8時、案内人が立ち止まった。山の頂上に着いたのだ。「こっちがラオス、そっちは中国だ」。脱北者たちは「ついに国境に着いたのか」と口々に言った。
だが、喜びもつかの間だった。案内人は「まだあと10時間歩かねばならない」と言った。一行が進む道には急斜面と急流が次々と現れた。ある人が言った。「わたしを置いていってくれ」と。ヨンファさんが手を差し伸べ、「死ぬときは皆一緒だ。それまで頑張って生き残ろう」と言った。限界に達していた一行に、案内人がこう叫んだ。「この山の上にバスが待っている!」と。垂直に近い斜面を上った。バスは一行をラオスの隠れ家に連れていった。次の日にはタイに密入国しなければならない。ヨンファさんのベトベトしたほおを涙が伝った。本紙の取材班は世界で初めて、中国から脱出する脱北者たちに密着取材した。中国・瀋陽からタイの首都バンコクまで、息が詰まるようなその道のりを紹介していく。
特別取材班
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