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「中国の公安に捕まるより死ぬ方がまし」(中)

【特集】天国の国境を越える

 午後11時、瀋陽駅から北京行きのバスが出発した。高速道路の入口で、公安が乗り込んで来た。一瞬で口の中がカラカラになる。ヨンファさんが取材チームに囁いた。「身分証を検査されたらどうしますか」。幸い、公安はさっと見回しただけで、そのまま降りて行った。北京に到着するまで、検問は3度。その度に一行は寝たふりをして、検問をやり過ごした。昆明行きの列車は、翌日午後4時30分に北京西駅を出発する。一行は各自散らばってその夜を過ごすことにした。

 8月17日、駅の広場での集合時間は午後2時。予定を30分過ぎて、ようやく全員が集まった。列車は二日三晩走り続ける。一行は皆別々に席を取り、1日に1度か2度、互いの安全を確認した。列車に同乗している公安が、いつ身分証の検査をするか分からない。食べ物が喉を通らなかった。8月19日午前4時。ヨンファさんが乗っていた客車で、不意に身分証検査が始まった。乗客の誰かが、持ち物をなくしてしまったというのだ。ヨンファさんはこっそりとトイレに行き、ドアに鍵をかけた。「1時間以上、そこにいました。他の人がドアを叩いても、耳を塞いで、開けなかったんです」。皆それぞれ、別のトイレに隠れていたという。「公安に捕まったら、そのまま飛び降りようと思いました。捕まるよりは、死ぬ方がまし」と語ったのはクムジャさん。列車が昆明駅に到着したのは、午前8時50分だった。

 すぐに国境の村へ向かわなければならない。一行が手配したミニバスの持ち主が、駅の広場で待っていた。韓国人だ。「宣教のために来た」と言うと、彼は答えた。「北朝鮮の方でしょう? 何日か前にも、公安に捕まえられたのを見ました」。誰も返事をしなかった。彼は車を出すと、時速100キロから120キロものスピードで走らせた。高速道路の先の方で不審検問が始まると、彼は素早くハンドルを切り、舗装されていない道に入って行った。息を殺していたヨンファさんが言った。「わたしは、捕まったら薬を飲んで死ぬつもり。どうしてこんなに体が震えるのかしら…」。彼女の「死ぬつもり」という言葉を冗談だと受け止める人は、誰もいなかった。

 舗装されていない道を9時間も走り、ついに国境へとたどり着いた。瀋陽から同行してきた案内人とはここで別れる。「必ず生き残らなければなりません。誰かが捕まっても、後ろを振り返ったりせず、逃げて下さい」。一行は中国人の案内人に連れられ、隠れ家に向かった。「何も質問せず、言う通りにして下さい。明日、8時間歩けばいいんです。そうすれば死んだりはしませんよ」。食欲は全くなかったが、皆食べ物を口に押し込んだ。明日の強行軍に備え、食べておかなければならない。

 8月20日午前10時。一行は2台の車に分乗し、また11時間ひた走った。その間、誰も案内人に言葉をかけることはなかった。車に乗ることに慣れていない脱北者たちは、乗車続きで車酔いに苦しんだ。幼いチョル君は、食べたものを全部吐いてしまった。午後9時、一行がたどり着いたのは国境の小さな穴蔵だった。案内人は警備の状況を見に行った。翌日夜明けに始まった山越えは、8時間どころか、18時間もかかった。

特別取材班

朝鮮日報/朝鮮日報JNS
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