【社説】尊厳死について社会的に議論すべき
植物人間状態となり、人工呼吸器での延命治療が行われている75歳のある女性の家族たちが11日、憲法裁判所に対し、「韓国の法には自らの尊厳を守りながら死を選択する権利や幸福を追求する権利が保障されていない」として憲法訴訟を起こした。訴えを起こした人たちは今月9日、「人工呼吸器、薬物による栄養分や水分の供給、心肺蘇生(そせい)術などの延命治療が無意味な状況になった場合には、これらを中断させて母が自然に死ぬことができるようにしてほしい」との仮処分申請をソウル西部地方裁判所に提出していた。蘇生の可能性がほとんどない患者が人間らしく死ぬことができる権利、すなわち「尊厳死」を選択する権利を法的に認めることを訴えた、韓国では初めての裁判だ。
尊厳死とは、激しい苦痛を伴う重症患者や回復の見込みのない病気にかかった患者に対し、薬物などを投与して自ら死を選択できるようにする安楽死とは異なる。そのままでは生存する可能性がない、と医学的に判断された患者に限って治療を終了させることができるということから、「消極的安楽死」とも呼ばれている。人間の生命は何よりも大切なものだが、その一方で自然の流れにより死に至るのを防ぐのもまた、人の命の尊厳を守らないという結果になる可能性がある。延命治療により大きな負担を強いられる家族の精神的苦痛や経済的負担、さらにそれに伴う社会的費用もばかにならない。
そのため世界的に見ても、積極的安楽死については一部の例外的な国を除いては違法行為とされているが、米国・フランス・ドイツなどでは延命治療を行わずに尊厳を維持した状態で死を選択するという意志を、普段から書面や遺書などで明確にしていた場合には尊厳死を許容している。しかし韓国ではこの尊厳死について、法的にも制度的にもまったく規定がなされていない。2004年には脳に手術を受けた患者を家族の要求で退院させたソウル・ポラメ病院の医師が、殺人ほう助の罪で有罪判決を受けた。そのため多くの医師たちは患者が自らの意志をまったく表明できない状況にあっても、治療を続けるざるを得ないという「防御診療」を行うしかない状況にある。
今や韓国でも尊厳死について社会的に議論すべき時を迎えている。日本もすでに慣行として、二人以上の医師が「回復の見込みなし」と判断した患者に対してのみ、本人の意思に従って治療が中断できるようになっている。さらに法制化も検討中で、実際に推進されている状況にある。
韓国でも政府や医療界、学界が共に協力して、尊厳死に対する厳格な判定基準やその手続きなどについて、社会的に幅広く議論を行うべき時に来ているのだ。
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