【萬物相】四川
「一夫当関、万夫莫開」(一夫関に当たれば、万夫も開くなし)、「蜀道之難、難於上青天」(蜀道の難きは 青天に上るよりも難し)-。唐代の詩人李白が故郷の蜀に向かう陸路の険しさを詠んだ「蜀道難」の一節だ。同じ時代の詩人杜甫も蜀に向かう途中、長江の難所三峡の一つ、瞿唐峡で岩が天に向かってそびえるさまを「入天猶石色、穿水忽雲根」(天に入るもなお石色、水をうがちてたちまち雲根)と形容した。杜甫が隠居していたキ州に向かうためには、高さ数百メートルの絶壁の間を流れる急流が何キロも続く谷を船で通過しなければならなかった。
蜀は昔から奥地であり天然の要塞(ようさい)だった。三国時代に諸葛亮が献策した「天下三分の計」によって劉備がこの場所を拠点に選んだのもそうした理由からだった。呉もみだりに蜀を征伐できなかった。結局、劉備は三峡を出た夷陵の戦いで呉に敗れ、諸葛亮も剣門関の外の五丈原で魏との戦いの最中に死んだ。蜀が簡単には倒れなかったのも地形のおかげだった。蜀が滅亡する直前、姜維が3万の軍勢で魏の10万の大軍を退けたのも剣門関だった。李白が「蜀道難」で詠んだのはまさにこの場所のことだ。
蜀は現在の四川省だ。長江をはじめ大河が4本も流れるところから付いた名前だ。面積は韓半島(朝鮮半島)の2倍を超え、人口は9000万人に達する。チベット族、チャン族、回族、ミャオ族など複数の少数民族が暮らす。天気が悪く太陽が珍しいため、「蜀の犬は太陽を見るとほえる」ということわざがあり、蒸し暑いのが特徴だ。このため、辛さが有名な四川料理が発達した。ソウルでも珍しくない「火鍋」がその代表だ。
四川省は北京から飛行機で2時間の距離だ。省都の成都に入ろうとすると、「中国最佳旅遊城市」(中国で最も優れた観光都市)という看板が至る所に目立つ。風景に負けず、遺跡も豊富だ。奥地にあったため、人々の自立心も強い。それでいて、四川人は和を重視し、競争を好まない。四川出身の商人は誠実さと正直さで名高い。
四川省の人々は同省出身のトウ小平氏の“子孫”らしく、2000年以降に毎年10%を超える高度成長を成し遂げた。中国の12省・市・自治区で進められる「西部大開発」の中心地と位置づけられる。その四川省を地震が襲った。死者だけで数万人に上るとされる。四川省は韓国人にとっても遠い場所ではない。仁川-成都に直行便が飛び、韓国人観光客が急増している。長い眠りから覚め、旭日昇天のごとく発展中の四川省が突然の天災の悲劇を早く克服することを祈りたい。
李先敏(イ・ソンミン)論説委員
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