【コラム】公権力の死(上)
そのとき、ベビーカーを引いていた男性が警察官に突っ掛かった。「この野郎、笛を吹くな。赤ん坊が目を覚ますじゃないか」。その警察官は今の任務に就くようになってから初めてこのような「命令」を受けたことだろう。そしてその男性は嘲るような目つきに変わった。「オレの言うことが聞こえないのか。笛を吹くなと言っただろう」。結局警察官は相手の顔色を伺いながら、小さな音で少しだけ笛を吹いた。
信号が変わると、男性は堂々とそのすぐ横を通り過ぎながら、「あの野郎、やめろと言ったらやめやがれ」などとブツブツつぶやいた。史上最大規模となった「6・10キャンドル集会」。その日の帰宅途中には、警察官の虚しい姿が浮かび上がっていた。
テレビ番組やインターネット上では警察に対し、連日「過剰鎮圧」「暴力的な警察」などの攻撃が殺到している。もちろんそのような暴力とも映るような事態も存在していた。しかし、現場で直接出会った制服姿の警察官たちは、まさに気力を失って死にかけていると言っても過言ではない。ほぼ瀕死(ひんし)の状態という表現が的確だろう。自分の体を管理するだけでも大変なのに、「法と秩序、公権力云々」すること自体、あまりにも違和感を持つようになったのだ。
普段から「善良な」市民は「派出所」の入り口を避けて通る。しかし「純情な」集会の参加者たちは、警察の本山である警察庁にも恐れず押し寄せていった。当時、警察庁の正門前には機動隊のバス十数台が、鉄の鎧で武装しているかのように停車していた。警察官は集会参加者の鎮圧どころか、自分の身を守るのに精一杯で、また体面を守るどころかバスでバリケードを作り何とか防いでいた。そうしているうちに集会参加者の一部がバスのタイヤをパンクさせ、唾を吐きかけた。しかし警察官はこの程度ならもう侮辱とも感じなくなっていた。警察官たちはその日、警察庁の建物を何とか守り抜いた。
崔普植(チェ・ボシク)社会部長
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