▲中国・北京市にある現代自動車のショールーム。来客がなく、店内は閑散としている。THAAD配備決定以降、中国で反韓感情が高まり、現代・起亜自の3月の中国での販売台数は前年同月を52.2%下回った。(3日午後、李吉星特派員撮影) ▲中国・北京市にある現代自動車のショールーム。来客がなく、店内は閑散としている。THAAD配備決定以降、中国で反韓感情が高まり、現代・起亜自の3月の中国での販売台数は前年同月を52.2%下回った。(3日午後、李吉星特派員撮影)

 今月3日午後、中国・北京市の繁華街にある現代自動車のショールームを訪れた。バスケットボールのコートよりも広い店内を販売員が歩き回り、来客を待ったが、1時間に誰も訪れなかった。店員は「韓国への終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配備決定以降、来客が半減した」と語った。現代・起亜自は4日、3月の中国市場での販売台数が7万2032台となり、前年同月を52.2%下回ったと発表した。中国政府によるTHAAD問題での報復措置が影響を与えたとみられる。

 現代・起亜自の工場も直撃を受けている。現代自は先月末から北京工場の夜間操業を中断。河北省の滄州工場は3月24日から12日間、稼働を中断した。起亜自では江蘇省の塩城工場が先月、第1-3工場で順番に1週間ずつ稼働を取りやめた。3月に入り、中国では起亜自への車両注文が前年同期に比べ70%近く減少し、塩城工場は先月の販売台数(1万6606台)が月間生産目標台数の30%にも満たなかった。起亜自関係者は「このままでは追加で稼働を中断する生産ラインが出かねない」と話した。当初は今年下半期に稼働予定だった現代自重慶工場も操業開始時期を決められずにいる。現代・起亜自の販売不振は始まったばかりだとの懸念もある。日本の自動車メーカーも2012年、日中が尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権問題で対立した際、中国での販売台数が最大で70%落ち込んだ。

■起亜自、3月の販売70%減

 現代・起亜自の中国での月別販売台数は、2月に9万1222台となり、昨年2月以降で初めて10万台を割り込み、3月には7万台余りまで落ち込んだ。減少幅は現代自が44.3%、起亜自が68.3%に達した。現代自関係者は「2月末に韓国政府がTHAAD配備先を発表した後、中国では韓国製品ボイコットのムードが広まっている。3月から新規注文が目立って減少しており、契約済み分のキャンセルも相次いでいる」と話した。

 現代・起亜自と同様、中国に進出したローン子会社や下請け業者も対応に苦慮している。自動車ローンを主力とする現代キャピタルの駐在員は3月から自動車販売が落ち込んでいることを受け、「このままでは韓国に帰任を命じられるのではないか」と不安を隠さない。

■中国メーカーがあおる「排他的愛国主義」

 中国の消費者の多くが反韓ムードで韓国車の購入をためらう状況で、現地の自動車メーカーは商業的な「排他的愛国主義(ショービニズム)」をあおり、「THAADマーケティング」を展開している。中国の地場メーカーA社は、韓国車をいったん注文してキャンセルすると、芳香剤など「愛国プレゼント」を贈るキャンペーンを実施。B社は自社のモデルに「韓国ブランド反対」という旗を掲げた。ドイツのフォルクスワーゲン(VW)のディーラーは、韓国車を売却してVW車を購入すれば、3000~1万6000元(約4万8000-25万7000円)の割引を行う販促キャンペーンを開始した。

 大林大自動車学科の金必洙(キム・ピルス)教授は「尖閣紛争当時、日本の自動車メーカーが販売台数を回復するのに6カ月程度かかった。現代・起亜自も当面の販売減に備えるべきだ」と指摘した。

■これといった解決策なし

 現代・起亜自は緊急事態だ。中国は現代・起亜自の販売台数全体の23%を占める最大の市場だからだ。鄭夢九(チョン・モング)現代自グループ会長は3日、役員会議を開き、THAAD問題による影響について報告を受け、速やかな対策立案を指示した。現代自幹部は「これといった解決策がなく、これまでよりも危機感が大きい」と語った。現代・起亜自は今年、中国での販売目標(195万台)の下方修正が避けられない。ただでさえ3-4年前から中国市場でのシェアが低下しており、THAAD問題が与える影響は大きい。今年2月時点で現代・起亜自の中国市場でのシェアは5.7%で、好調だった14年の10%台に比べ半分にまで落ち込んだ。追い打ちをかけるように、第2の重要市場である米国でも販売台数が11%減少している状況で、中国市場の不振によるショックはなおさらだ。

 産業研究院のイ・ハング上級研究委員は「THAAD問題は企業がコントロールできるものではないが、競争力がある製品の発売、顧客の信頼構築に向けた社会貢献活動の強化など克服策を立てる必要がある」と述べた。現代・起亜自は中国で先月発売した「悦動」を含め、今年は6つの新モデルを投入すると同時に、キャッシュバックを検討するなど、マーケティングを強化する方針だ。

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