終末高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備をめぐる中国の報復によって、韓国側の被害は120億ドル(約1兆3500億円)に上ることが分かった。しかし韓国政府はTHAAD報復の被害内容や被害額を集計・発表することはなかった。それどころか担当部署である産業通商資源部(省に相当)が世界貿易機関(WTO)への提訴を検討すると表明していたにもかかわらず、青瓦台(韓国大統領府)がこれに待ったをかけ、WTO提訴というカードを自ら取り下げるなど本気で対応する姿勢が全く感じられなかった。一方、日本は尖閣諸島(中国名:釣魚島)をめぐる領有権争いが激化した2010年に中国がレアアース(希土類)の対日輸出を禁止したことをめぐり、12年6月にWTOに提訴し、2年後に勝訴している。

 産業通商資源部は9月13日、ソウルで第13回韓中通商点検タスクフォース(TF)会議を開催し、10月に開かれるWTOサービス貿易理事会などを通じて中国のTHAAD報復の撤回を強く要求し、国際ルールに違反していると思われる措置についてはWTOへの提訴を含む法的手段の検討と証拠収集を続けると表明していた。しかし、その翌日に青瓦台の朴洙賢(パク・スヒョン)報道官は「今は北朝鮮の核問題とミサイル挑発などで中国との協力を維持することが非常に重要」だとして提訴を保留する姿勢を示し、WTO提訴は「なかったこと」になった。通商の専門家たちは、産業部と青瓦台のこうした足並みの乱れによって、ただでさえ難しいWTO提訴がさらに困難になったと指摘した。

 中国政府は一貫して「政府レベルでのTHAAD報復はしていない」と主張している。中国に進出している韓国企業が経営難に陥っていることについては「民間レベルの自発的な不買運動」のせいだと強弁する。このため韓中FTAのサービス・投資分野の追加交渉ではTHAAD報復のような事態を防ぐ措置が急務だとの指摘が出ている。ソウル大の安徳根(アン・ドックン)教授は「THAAD報復でよく分かったが、両国の貿易環境を安定させるのが重要だ」として「ルールに違反した際の解決手続きなどを明文化する努力をすべき」と指摘した。

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