韓国国内の複数のメディアが「大統領府だけが炭疽(たんそ)菌ワクチンを購入し予防接種まで行っていた」と報じたことについて韓国大統領府は24日「予防用ではなく事後の治療用であり、国民を治療するための1000人分のワクチンも購入した」と反論した。しかし25日の時点でネットでは「大統領と大統領府だけが国民で、一般国民は炭疽菌テロにさらされても関係ないのか」といった書き込みが相次ぎ、また「一般国民用が1000人」という説明には「国民が何人いるのか知っているのか」という趣旨の書き込みも多かった。大統領府は当初「警護処が購入した治療用炭疽菌ワクチンは350人分」と説明していたが、この日は「110人分」に修正した。
 一連の過程で大統領府の複数の関係者は「炭疽菌ワクチンの購入を決め、予算を確保したのは朴槿恵(パク・クンヘ)政権であり、われわれはそれを執行しただけだ。批判を受けるのは悔しい」とコメントしていた。大統領警護処が海外からワクチンの輸入を決めた時期が2016年の初めだったのは確かであり、そう考えると大統領府の説明は間違っていない。北朝鮮による生物化学兵器攻撃の可能性が高まる中、韓国国内に存在しない炭疽菌ワクチンを輸入するのは当然のことだ。北朝鮮の脅威に対処するため、政府は考えられるあらゆる事態を想定しておかねばならないことから、予防接種用であれ治療用であれ、ワクチンを確保しておくのはいわば常識的な対応だ。また大統領府が確保したワクチンは韓国国内ではまだ臨床試験が行われていないため、そのようなワクチンを全国民の治療用に輸入するのも確かに無理があるだろう。

 ところが大統領府はこれらを国民にきちんと説明せず「前政権のせい」と最初から主張している。大統領府は前政権で行われた政策の多くを「積弊」と決め付け、そのほとんどを覆した。その中には原発建設計画といった重要政策もあり、THAAD(米国の高高度防衛ミサイル)配備や慰安婦合意など他国との間で取り決められたものもある。今回問題となった炭疽菌ワクチンの確保は、これらの重要政策に比べると政府の判断によっていくらでも見直せるものだった。先に購入しておきながら、批判を受けるとその責任を前政権になすりつける大統領府の対応はおかしいだろう。

 イム・ジョンソク大統領秘書室長によるアラブ首長国連邦(UAE)訪問問題についても大統領府は当初「派兵した将兵の慰問」としていたが、疑惑が膨らむと「前政権で疎遠になっていた関係を回復するため」などと説明を変えた。閣僚候補者が脱落する時も「前政権による検証方式のせい」、殺虫剤卵問題では「食品の安全管理がずさんだった前政権のせい」と主張した。疑惑があればそれを何でも前政権のせいにするのではなく、まずはありのまま堂々と説明した方がかえってよいのではないか。それこそまともな政府のやることだろう。

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