米国のペンス副大統領は9日、平昌冬季オリンピックの開会式出席に先立ち、韓国海軍第2艦隊の哨戒艦「天安」記念館を訪問することが分かった。米ホワイトハウスが明らかにした。また同じ日にはソウル市内で4-5人の脱北者と面会する予定も組まれているという。北朝鮮に抑留され、解放後に死亡した米国人大学生・ワームビアさんの父親もペンス副大統領に同行する。ペンス副大統領はアラスカのミサイル防衛司令部と在日米軍基地を経て8日に来韓し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と会談する。
 ペンス副大統領の日程には明確なメッセージが込められている。それは北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とその集団に対し「いかなる幻想も持つな」「オリンピックを利用した欺瞞(ぎまん)作戦にはだまされないぞ」というものだ。ホワイトハウスは会見で「ただ(開会式の)リボンを切ることが来韓の目的ではない。(ペンス)副大統領は金正恩氏がオリンピックから発せられるメッセージを拉致することを深刻に懸念している」と伝えた。その上で「北朝鮮は過去にも捏造(ねつぞう)の大家であったし、現在は殺人的政権だ」とはっきり指摘した。

 ところが韓国政府はこれとは全く逆の方向に進んでいる。陸路で来るはずだった北朝鮮の三池淵管弦楽団が貨客船「万景峰92」で来韓すると連絡してきた際には何も言わずこれをそのまま受け入れた。これによって哨戒艦「天安」沈没を受け北朝鮮の船舶入港を禁じた韓国の5・24制裁に対し、北朝鮮は一瞬にして「例外」を認めさせ穴をあけることに成功した。しかしその直後、ペンス副大統領は天安の視察にやって来る。北朝鮮が「金正恩氏の業績」などと宣伝する馬息嶺スキー場に韓国政府は特別機で選手を派遣し、米国による北朝鮮への独自制裁にまで例外を認めさせた。万景峰は北朝鮮の故・金日成(キム・イルソン)主席が生まれたとされる場所の名称で、三池淵は故・金正日(キム・ジョンイル)総書記誕生の地と北朝鮮が宣伝している地名だ。また三池淵管弦楽団は金正恩氏が立ち上げた楽団だ。「万景峰+三池淵+玄松月」という金氏三代を偶像化する部隊が陸海空を通じて韓国に大挙押し寄せるようなものだ。平昌オリンピック開会式前日の8日には北朝鮮で軍事パレードと玄松月楽団による公演が行われる。さらに9日には北朝鮮のテコンドーチームが開会式前に事前公演を行うという。

 オリンピックが終わると、民族を全滅させかねない北朝鮮の核問題が再び浮上するはずだ。オリンピックに向けた南北対話について、今後これを非核化に向けた南北交渉にまでつなげたい韓国政府の意図と努力が成功すれば幸いだ。しかし金正恩氏が平昌に北朝鮮選手団や関係者を派遣する目的は非核化交渉ではなく、核武装に障害となる北朝鮮制裁を有名無実化することにある。金正恩氏を非核化交渉に引き出すには、北朝鮮政権を崩壊させるほどの厳しい圧力が必要だ。ところが韓国の与党「共に民主党」のある中堅議員は6日「ペンス副大統領は祝いの席に騒ぎを起こしに来る」と発言した。これはおそらく韓国政府の本音を代弁するものだろう。韓国と米国の両政府の言動や考えがここまで食い違う現状に鑑みると、今後韓国国内から「対北制裁無用論」が再び語られ始めるかもしれない。しかしその後に何が起こるかは誰も予測できない。

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