平昌五輪から半年前、スイスのダボスで「平昌の夜」が開かれた。韓国外交部(省に相当)が支援した行事だった。高級ホテルを会場に有名ピアニストの公演まで準備した。しかし、会場は閑散としていた。1時間たっても出席予定者の半分も来なかった。これといった世界的な企業経営者の姿も見えなかった。席を埋めたのは、韓国から来た政財界関係者だった。事実上内輪の行事になってしまった。

 その直前に開かれた中国電子商取引大手、アリババ・グループ(阿里巴巴集団)の馬雲(ジャック・マー)会長による夕食会は異なった。国王、大統領、首相級からビル・ゲイツ氏のような大物までが列を成した。「平昌の夜」とは比較にもならない大盛況だった。アリババは馬会長自らがゲストに出席を呼び掛けたという。韓国政府は座して待つばかりだった。五輪の開催国なのだから、招待状を送れば来てくれると考えたのだろう。外交的な怠慢で大恥をかいた格好だ。国を代表する政府が民間企業にも劣るという屈辱を味わった。

 9日に開幕する平昌五輪でも韓国の外交状況はお寒い。外国首脳クラスの出席者は26人だけだ。4年前のソチ五輪の半分だ。韓国政府が北朝鮮に気を取られる余り、VIP誘致外交を怠った結果だ。出席者の数だけでなく、舞台そのものが北朝鮮の物と化した。五輪が北朝鮮にハイジャックされたとさえ言われる。五輪は開催国が主演を演じる多国間外交の華だ。韓国が開催権を得た五輪なのに、北朝鮮がホストのように振る舞っている。北朝鮮にばかり熱心になり、こんな状況を招いた。

 政府が誤解していることがある。政府は競争しなくてもよいかのように錯覚しているのだ。政府という存在はそんなに安楽であるはずはない。国外の至る所に政府のライバルがいる。世界の全ての政府が互いをライバルだと思い、国益を争っている。ダボスではアリババが政府のライバルだった。五輪外交では過去の開催地が全てライバルであるはずだ。ライバルを見てはっと思わなければ、まともな政府ではない。

 トランプ政権の貿易報復が韓国にばかり集中している。韓国は対米黒字が10位にすぎない国だ。それでも洗濯機、鉄鋼などが相次いで爆弾にさらされている。ライバル国は巧妙に報復を避けている。中国は対米黒字トップだが、まだ大きな被害を受けていない。韓国の3倍の黒字を上げる日本も無事だ。いきなり韓国が最大の被害国になった。

 なぜ韓国だけたたくのかと腹を立てればよいというものではない。全ての国がそれぞれのやり方で通商攻撃に守りを固める。中国は大国としてのパワーを活用する。米国債売却といったカードをちらつかせ、戦略ゲームを駆使している。日本は米国に寄りすがる。飼い犬のように親米路線を歩む。力も戦略もない韓国だけがたたかれている。国力が弱い国なのに、政府の戦略まで不十分だ。ちゃんとやろうという意志も足りない。こんな国ではうまくいかない。

 世界は豊富な雇用に沸いている。米国の失業率は過去17年で最低だ。労働力が足りない企業が犯罪前科者までかき集めているほどだ。中国の求人倍率は1.22倍にまで上昇した。求職者1人当たり1.22件の求人があるという意味だ。日本でも青年が会社を選ぶ売り手市場となって久しい。韓国だけが最悪の就職難に苦しんでいる。世界の雇用競争でますます遅れている。若者たちは外国の様子がうらやましくて、目の玉がひっくり返るほどだ。

 現状は政府が自ら招いた部分が少なくない。大企業の法人税を引き上げたのは、競争を考慮しなかったからだ。ライバル国を意識すれば、そんな決定は下せない。最低賃金引き上げ、脱原発にも安易には踏み切れない。競争力を低下させる自害行為だからだ。労働改革を後退させることはなおさらできなかったはずだ。競争を意識しないから、政府の思いのままになる。政策の逆行が国益喪失につながっている。

 企業がショッピングするかのように国を選ぶ時代だ。あらゆる国の政府が選ばれようと必死だ。ライバル国を上回る条件を抱え、企業にラブコールを送る。税金を下げ、規制を緩和し、労働改革を進めることで各国と競争している。競争で敗れた政府は捨てられる。よりよい国に工場を移転し、資本は流出する。雇用も同時になくなる。どの政府もこの恐ろしい競争による報復は避けられない。

 多くの国が「セールスマン政府」の道を歩んでいる。トランプ大統領は企業のお悩み解決役となった。安倍首相は企業の望みを全て聞くという。彼らこそ文大統領が競争すべき相手であるはずだ。

 大統領のライバルは国内ではなく国外にいる。元大統領や過去の政敵がライバルではないはずだ。今夜文大統領は平昌五輪のホストとして、各国から来たライバルたちを迎える。

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