盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権当時の2007年11月28日午後、北朝鮮の平壌市内にある松田閣招待所1号閣(貴賓閣)で突然ピアノの音が鳴り響いた。第2次南北国防長官会談のため平壌に滞在していた金章洙(キム・ジャンス)国防長官(当時)が演奏したものだ。前日から始まった国防長官会談で双方の意見が対立し、進展が見られなかったため、金章洙氏は気分転換のためピアノを演奏したという。金章洙氏が「北朝鮮がNLL(西海〈黄海〉北方限界線)を認めないなら交渉には応じられない」として一歩も譲らなかったことから、北朝鮮のキム・イルチョル人民武力部長(国防長官に相当、当時)ら北朝鮮側は金章洙氏に「NLLにこだわるのは北南首脳会談の精神と結果を知らないからだ」と圧力を加え、最後に「盧武鉉大統領に電話しろ」と言ってきたという。07年10月の南北首脳会談で金正日(キム・ジョンイル)総書記と握手する際、腰をかがめなかった金章洙氏は「剛直将軍」としても知られていた。

 その金章洙氏が26日に検察に出頭した。朴槿恵(パク・クンヘ)政権で大統領府国家安保室長在任中、旅客船「セウォル号」沈没に関する報告書を捏造(ねつぞう)した容疑で事情聴取を受けるためだ。27日には金寛鎮(キム・グァンジン)前国家安保室長も検察に出頭する。韓国軍による「ネット書き込み工作」に対する捜査の縮小・隠蔽(いんぺい)を指示した容疑だ。金寛鎮氏が検察に出頭するのは昨年11月以来3カ月来のことだが、この時は令状審査で身柄の拘束が認められなかった。二人は盧武鉉政権以降、常に韓国における国防政策のトップにあった。金寛鎮氏は国防長官在任中、北朝鮮の挑発に断固とした対応を指示したこともあり、北朝鮮が最も恐れ、また金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が最も毛嫌いする人物だった。金寛鎮氏の国防長官在任中は北朝鮮の挑発も止まったが、米国防省はこれを「金寛鎮効果」と呼んでいたそうだ。

 北朝鮮の高位級代表団を率いて来韓中の金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党統一戦線部長は偵察総局長だった当時、哨戒艦「天安」爆沈や延坪島砲撃、さらに非武装地帯(DMZ)での地雷挑発などさまざまな挑発を指示したが、その時韓国で国防政策のトップにいたのがこの二人だった。ところが今、その挑発の主犯は大きな被害を受けた韓国で国賓級のもてなしを受け、これに対応した二人は相次いで検察に出頭させられ取り調べを受けている。しかも二人が取り調べを受けるのは金英哲氏の韓国滞在中だ。
 このような事態が起こっていることに、前職・現職の韓国軍関係者の多くが驚きと懸念を示している。ある予備役将校は「韓国軍統帥権者の大統領は、謝罪もしていない天安爆沈の主犯に会ったが、韓国軍の元トップは非常に厳しい立場に追い込まれている。あまりにも大きな侮辱を感じる」と述べた。
 もちろん金章洙氏も金寛鎮氏も功績もあれば過ちもあっただろう。また検察に対しては家宅捜索や取り調べをやるなと言いたいわけではない。ただ出頭させる時期を金英哲氏が韓国を離れた後にするなど、ちょっとした配慮ができなかったか聞いてみたいものだ。

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