今年の初め、検察と警察が「クジラの肉」をめぐって対立を起こした。警察が押収した鯨肉を検察が業者に返還してやると、動物保護団体が検事を警察に告発した。それでも検察がびくともしなかったので、この団体は韓国大統領府(青瓦台)に駆け込んだ。「青瓦台が真相を明らかにしてほしい」と請願を出し、民政首席に手紙も書いた。同じような請願がおよそ20件、後に続いた。

 2月22日午後、大統領府のインターネット請願が12万3900件を超えた。1日およそ770件の請願が寄せられたことになる。このうち15件は20万人以上が参加したもの。請願参加者が20万人を超えたら答弁するという約束により、大統領府はこのうち8件に答弁した。「フェミニズム教育の義務化」「国会議員給与を最低時給に」など7件は答弁待ちで、まさに「国民申聞鼓(民衆が王宮の鼓をたたき王に直訴する制度)時代」だ。

 韓国の国民請願は、公務員の不当な行為で被害に遭った国民が、国家機関に直接訴えて救済を受ける制度だ。韓国憲法にも規定されている。立法関連意見も出すことができ、直接民主主義を実現するという側面もある。インターネット・ソーシャルメディア時代になるのに合わせ、政府の世論集約方式も変化してきている。米国ホワイトハウスも「We the People」というネット請願制度により、国民との距離を縮めている。

 これまで請願制度がどれほど形式的に運営されていたかを思うと、かくやとも思う。しかし、一段と政治偏向的な集団攻撃、人民裁判スタイルの世論のあおり立てが横行する現象は懸念すべきものだ。スピードスケート女子団体追い抜きの選手たちから国家代表資格を剥奪せよという請願には、4日間で57万人が集まった。海外メディアにまで報道されるほどだ。野党議員をオリンピック組織委員から罷免せよという請願、サムスン事件の裁判長の罷免を求める請願にも数十万人が参加した。アイドル歌手のファンクラブが群がって争いを繰り広げるかと思えば、請願参加者数の誇張問題も絶えない。米国とは異なり、一人が重複して意思表示できるシステム上の盲点があるせいだ。

 韓国国民の声を聞く窓口に、何かにつけて大統領府の秘書らが口を出すのも問題だ。民政首席は「堕胎罪の答弁」に乗り出したが、カトリック界の反発を買った。ニューメディア秘書官は、サムスン事件の裁判長罷免要求請願をめぐって「国民の意思を傾聴すべき」と言った。秘書官が裁判にあれこれ言う権限を、誰が与えたのか。そんなことだから、誰もかれも皆、問題を青瓦台に持っていって決着をつけたいという風潮が生じた。任鍾晳(イム・ジョンソク)秘書室長は2月21日、「答弁するには不適切な請願が多く、悩んでいる」と語った。悩むようなことではない。大統領府の秘書は手を引き、そもそも趣旨にそぐわない主張は取り除くことできるよう、システムを改善すべきだ。

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