北朝鮮の趙明禄(チョ・ミョンロク)元国防委員会第1副委員長が2000年10月に金正日(キム・ジョンイル)総書記の特使としてワシントンを訪問した。趙氏は当時のオルブライト国務長官と面会する際にはスーツ姿だったが、ホワイトハウスでクリントン大統領に金正日総書記の親書を手渡す際には軍服に着替え、力強い声で訪米の目的について説明した。クリントン大統領が「あなたは政治家のようだ」と冗談を口にするほど話は順調に進んだ。直後に修好に向けた米朝共同コミュニケが電撃的に採択された。趙氏の米国訪問から2週間後にはオルブライト長官が平壌に向かった。

 趙氏と面会したクリントン氏は大統領退任後、自らが特使として平壌を訪問した当時の記録を残している。クリントン氏は2009年、北朝鮮に抑留されていた米国人女性記者2人を救うため、オバマ大統領の特使として北朝鮮に渡った。その際、平壌で金総書記は晩さん会を催し、クリントン氏を14種類の料理からなる最高級の食事でもてなした。そしてクリントン氏に「今日の夜は私と私の愛人、そしてあなたのために3枚のチケットを準備した」と述べ、「アリラン公演」を一緒に観覧するよう誘ってきた。しかし金総書記からの3回にわたる提案をクリントン氏は全て断った。オルブライト氏が北朝鮮で体制宣伝用のアリラン公演を観覧したことで、米国内で激しい批判を受けたことを知っていたからだ。

 日本の安倍首相の特使として2013年5月に北朝鮮に渡ったのが飯島勲氏だ。飯島氏は小泉元首相の2回の訪朝にいずれも随行した策士としても知られる。当時、飯島氏は北朝鮮における名目上の国家首班である金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員会委員長と面会し、日本との高官級対話が再開されるかのような雰囲気が高まった。参議院議員選挙を2カ月後に控え、日本人拉致問題が解決に向かえば安倍首相自ら北朝鮮を訪問するとの見方もあったが、その後は何の進展もなかった。当時、韓国外交部(省に相当)は「飯島氏の訪朝は対北朝鮮政策での協調にプラスにならない」としてあからさまに批判した。

 ところが今回はその正反対の状況が展開している。韓国大統領府の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長(閣僚級)を団長とする文在寅(ムン・ジェイン)大統領の特使団が5日に北朝鮮を訪問したことについて、米国と日本はどこか不満げだ。両国はいずれも非核化の必要性を改めて強調したが、特使の訪朝を歓迎するコメントは一切出していない。韓国政府による特使派遣を疑いの目で見つめているのだ。
 特使の派遣が成功するには二つの条件がある。一つは派遣する指導者の信頼がなければならないこと。もう一つは相手側の指導者を説得できることだ。今の韓国はこれに加え、国際法と同じ効力を持つ国連の対北朝鮮制裁にも反してはならない。通常、特使外交の次に行われるのは首脳会談だ。今回特使は金正恩氏から非核化の約束を引き出せるだろうか。それが単なる想像に終わらないことを願うばかりだ。

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