故・金大中(キム・デジュン)元大統領は2000年2月、日本のTBSとのインタビューに応じた際、北朝鮮の故・金正日(キム・ジョンイル)総書記について「指導者としての判断力や識見を持っていると思う」「実用主義者だ」などと称賛した。それから4カ月後に最初の南北首脳会談が実現した。平壌から帰ってきた後も金大中元大統領は金総書記について「非常に頭が良く、世界情勢についても多くのことを知っている」「他人の言うことを素早く理解する」などと高く評価した。この年の8月には当時の朴智元(パク・チウォン)文化観光部(省に相当)長官も「(金総書記は)細やかだがスケールが大きく、政治的な瞬発力にも優れている」と称賛した。金総書記が起こしたアウンサン・テロや大韓航空機爆破なども「スケールが大きく政治的な瞬発力が優れていたため」だったのだろうか。

 故・盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領は2007年10月に南北首脳会談のため平壌に行った際、万寿台議事堂の芳名録に「人民の幸福が出てくる人民主権の殿堂」と書いた。北朝鮮住民について「幸福」「主権」などと表現したことには驚く。金総書記についても「平和への意志を確認した」「対話ができる人物」などと高く評価した。当時の韓国政府関係者らも金総書記を「スケールが大きく大胆だ」などと一様に称賛していた。

 金総書記は南北首脳会談の際、当時の統一戦線部長一人だけを同席させた。これについて外交官出身のある脱北者は「うそをつく様子を複数の人間に見せたくなかったから」と指摘する。この脱北者は金総書記と北欧のある国の首脳の単独会談に同席したことがある。会談で北欧の首脳は「改革・開放」を求めたが、その時この脱北者は金総書記が激怒しないか緊張したそうだ。しかし金総書記は「その通りだ。われわれには改革が必要だ」と逆にその言葉をすんなり受け入れた。この北欧首脳ももしかすると金総書記を「スケールが大きく大胆」と考えたかもしれない。

 一昨日平壌から戻った対北特使団は金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長について「率直で大胆なスタイル」と評した。金正恩氏は高射銃で人間の体を粉々にし、火炎放射器で完全に燃やし尽くしただけでなく、自らの腹違いの兄を他国の国際空港で化学物質を使い毒殺した人物だ。このような行動もその「大胆さ」故に行われたのだろうか。

 かつてリビアの独裁者だった故カダフィ大佐に会ったことのある人物は「リビアは問題の多い国だが、予定から1時間遅れで現れ、斜めに座ってティッシュで汗を拭き、そのティッシュを床に捨てたカダフィ大佐を見ると、自然に恐れ入ってしまった」と語る。王と同じような立場、あるいは生殺与奪の権力から来る一種のオーラだろう。金正恩氏に会った特使団の一人が両手をうやうやしく合わせていた様子を見ても、そのオーラを改めて実感する。今後は韓国政府の中から金正恩氏のご機嫌取りあるいは称賛の言葉がどんどん出てくるだろう。それも核廃棄に向けた戦略の一環と願いたいが、それでも金正恩氏を称賛する言葉を聞くとどうも気持ちはすっきりしない。

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