▲姜仁仙(カン・インソン)ワシントン支局長

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領による対北朝鮮特使団が北朝鮮から帰ってきて「北朝鮮は米朝対話と非核化への用意がある」と言ったことに対し、米ワシントンは「歓迎」と「警戒」の声を同時に挙げるなど複雑な反応を見せている。

 ドナルド・トランプ米大統領からして「非常に肯定的」としながらも「無駄な希望になるかもしれない」と言った。オバマ政権で北朝鮮関連の業務に当たっていた韓半島(朝鮮半島)専門家は「この対話提案が『突破口』なのか『わな』なのかはよく分からない。51%の期待と49%の不安を感じている」と言った。

 ワシントン内の強硬派は「北朝鮮は信じられない」と、対話派は「この機会を逃してはならない」と主張している。ワシントンにおける「対話派」は最近ほとんど声が聞こえてこない少数グループだ。対話派側の専門家は「ジョージ・W・ブッシュ大統領の時代に北朝鮮の核問題が発生して以来20年近く、ワシントンで対話派は冬眠していた」と語った。

 「韓半島戦争危機説」が盛んに取りざたされている中でも、米朝が突然対話局面に入る可能性はワシントンで常に言われていた。しかし、「最大の圧力と関与」を対北朝鮮政策の大きな方向性として設定しているワシントンは、対話局面に流れるというよりも、「また北朝鮮にだまされるのではないか」と不安がっている。

 ホワイトハウスの上部関係者は緊急電話会見で、「北朝鮮は時間稼ぎをしているのではないか」と疑問を呈した。北朝鮮が「軍事的脅威が解消され、体制安定が保障されれば、非核化について米国と対話する用意がある」と言ったことについては「何も変わっていない」という見方もある。

 エバンス・リビア元米国務副次官補(東アジア・太平洋担当)はワシントンのアジア関連ニュースレター「ネルソン・レポート」に「北朝鮮が非核化に転じるのでなければ、私たちは、その結末をすべて知っている一度見た映画をまた見ることになる」と語った。

 大統領府の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長(閣僚級)と国家情報院の徐薫(ソ・フン)院長が8日、米国に向かった。トランプ米大統領に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長のメッセージを伝えるためだ。特使団が北朝鮮から帰るやいなやワシントンに向かったことについて、ワシントンのある韓国消息筋は「韓国が運転席に座ってハンドルを握ったのはいいが、スピードを出し過ぎてはならない」と述べた。

 これまでワシントンでは「韓国式外交」への不満が募っていた。ホワイトハウスのある高官は私的な場で、「米国に全く時間を与えずにコーナーに追い込み、思い通りの答えを取り付ける韓国に疲れた」と打ち明けたという。

 ワシントンで「対話派」の代表と言われる元官僚は「韓国は果敢によくやったと思う。危機感が低まっただけでも大変な成果だ」と言った。だが、この元官僚ですら「米朝対話が行われるまでの過程は決して容易ではないだろう」と予想している。

 ワシントンの対話準備が十分でないのも問題だ。ビクター・チャ氏の駐韓米国大使内定が白紙となり、北朝鮮とのチャンネル役を務めたジョセフ・ユン元北朝鮮政策特別代表が引退したため、トランプ政権内に北朝鮮との交渉経験を持つ人物はほとんどいない。マイク・ペンス副大統領が平昌冬季五輪の時に見せたぎこちなさは、トランプ政権が「外交作戦」に弱いことを示している。

 金正恩委員長の新年のあいさつ以降、北朝鮮の平昌冬季五輪参加、対北朝鮮特使団訪朝などで南北関係が目まぐるしく変化している間、ワシントンは軍事的選択肢と制裁の切り札を両手に持ったまま、懐疑的な目で見守ってきた。南北関係がバラ色になったら、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対する米国の安保不安も解決するだろうか。

 ここで半歩前進できれば、ワシントンの警戒心は期待に変わるかもしれない。しかし、展望するのも期待するのも今はまだ早すぎるというのがワシントンの雰囲気だ。

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