韓国国防部(省に相当、以下同じ)の宋永武(ソン・ヨンム)長官が8日、スウィフト米海軍太平洋艦隊司令官に「(韓米合同軍事演習期間に)米国の拡張抑制戦力や原子力潜水艦のようなものは司令官がいる間は韓半島(朝鮮半島)に展開しなくてもよい」と発言した。スウィフト司令官は韓国の国防長官の口からこのような言葉が出るとは全く考えてもいなかったようだ。スウィフト司令官は宋長官の発言を聞き違え「しっかりと準備している」と述べたが、これに宋長官は再び「いや、韓半島には来なくてもよい」と繰り返し口にしたという。

 宋長官の発言で波紋が広がると、国防部は「4月末の離任までは楽に過ごしてほしいという慰労の言葉だった」と釈明したが、誰もそのような弁解など信じないだろう。国防部のある幹部はこの日「韓米合同軍事演習は例年と同じレベルで行われる」としながらも「戦略兵器に関してはいつもと同じようにやって来るわけではない」と述べた。北朝鮮が挑発を繰り返すたびに韓半島に展開していたB1、B52爆撃機、あるいは戦略潜水艦、攻撃潜水艦の訓練参加に韓国政府が反対もしくは縮小しようとしているのだ。これらの戦略兵器は北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が最も恐れているもので、韓米同盟による戦争抑止力の核心でもある。拡張抑制戦力とは韓国に対する核攻撃が近づいた際、米国の核戦力はもちろん、在来戦力まで総動員してリスクを除去することを意味し、核兵器を持たない韓国としては北朝鮮の脅威に対応できる唯一の手段だ。

 金正恩氏は今は友好的なジェスチャーを取ってはいるが、北朝鮮は過去25年にわたり韓国と国際社会を同じ方法で欺き、その裏で核開発を進めてきた。核実験に至ってはすでに6回も強行している。そのため今後北朝鮮が本当に非核化に応じるのか、あるいはまたも新たな欺瞞(ぎまん)作戦を行っているのか誰も分からない不確実な状況で、韓国政府自ら韓米合同軍事演習を骨抜きにしようとしているのだ。北朝鮮は定期的に行われる韓米合同軍事演習については問題視しないとすでに明言しているが、韓国自ら北朝鮮の意向に沿った行動を取ろうとしており、しかも他でもない国防長官がその先頭に立っている。北朝鮮に対しては宥和(ゆうわ)的な態度しか取らない現政権の中で、それでもバランスを維持する役割を果たしてきた国防長官までこんなことを言い出すとはどういうことか。本来ならスパイを取り締まり北朝鮮の動向を把握すべき国家情報院がなぜか北朝鮮との交渉に臨んでいるのが現政権だ。今この国では一体誰が危険極まりない北朝鮮の動向に神経をとがらせ、国の安全保障に専念しているのだろうか。

 北朝鮮に核開発を放棄させるには対話と並行して韓米両国が力を合わせ、今後も最大限の圧力を行使し続けねばならない。金正恩氏が今回韓国から派遣された特使団に「韓米合同軍事演習についても理解する」と譲歩してまで対話に応じているのは、このような軍事的圧力を脅威に感じているからだ。しかも現時点では北朝鮮の核とミサイルに何の変化も見られないが、金正恩氏の一言で韓国政府は非核化がすでに始まったかのように自らの備えを緩めようとしている。この日宋長官が「戦略兵器は来なくてもよい」と発言したその時、米国メディアは一斉に「韓米両国は合同軍事演習を大規模な形で再開することで合意した」とする米国防省関係者の発言を引用して報じた。これでは同盟国の軍隊が同じ計画に基づいて動いているのか疑わしく感じてしまう。

 北朝鮮との対話と交渉は何があっても続けていかねばならない。ただし統一部や外交部などそれを担当する政府部処(省庁)は厳然と存在する。国家情報院は対話が行われている間も北朝鮮の真意を把握しなければならず、国防部は軍事面での備えをさらにしっかりと維持しなければならない。そうであってこそ交渉力も一層高まる。ところが今韓国では誰もが武装解除したかのような状態だ。このまま対話局面がさらに進んでいけば、この国は一体誰が守るのだろうか。

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