東京都内の中産層が集まる世田谷区。世田谷区の住宅街にはあちこちに「ふれあい・いきいきサロン」がある。これは地元の高齢者らが参加して仲間づくりをする活動のことで、同区にはさまざまなサロンが数百あると有名だ。サロンという言葉は17-18世紀のフランス貴族たちの社交場に由来している。上流階級の人々が集まって会話を交わした貴族の邸宅のリビングルームがサロンと呼ばれていた。

 韓国では「ルームサロン」(ホステスがいて酒を飲み、踊ったり遊んだりする店)という言葉が使われているため遊興のイメージがあるが、そうではない。日本でサロンと言えば私的な集まりの空間や小規模な近所の集まりを意味する。

 日本では今、サロン文化が花開いている。全国にサロンは約6万カ所あるという。ほとんどがお年寄りのためのシニア・サロンだ。5-10人が集まってサロンを開く。夜間のみ営業する飲食店を昼間に借りてサロンとして使うこともあるし、区役所が近所の空き店舗を一時的に貸してくれることもある。そこに行けば毎日知っている人がいて、会話を交わす。毎週順にメンバーの家に集まって昼ご飯を一緒に食べるサロンや、囲碁・将棋・生け花などの趣味を楽しむサロンもある。

 高齢者たちはサロンを通じて助け合っている。誰かが病気になったら一緒に病院に行き、入院・退院などで手伝いをする。家でカーテンを替えると言えば、みんなで行って手伝う。一緒にボランティア活動をするサロンもある。昔、韓国の農村でも村の中で助け合いがあったが、そうしたものが超高齢社会の日本ではサロンという形になったようだ。

 規模が大きなサロンは都市部よりも地方に多い。地方には20-30人が集まるスペースがあり、町村の名前や愛称が付けられたサロンがある。お年寄りが集まってゲームをしたり、歌ったりする。遊ぶ時も一緒に遊ぶ。シニアの間から始まったサロンは最近、子育て中の主婦の間にも広がっている。近所のお母さんたちが集まって情報を共有したり、共同購入をしたりする。

 サロンの活動が活発になるにつれ、企業も立ち上がった。生活や趣味を共にする会員制サロンに鉄道会社が支援金を出すこともある。社会貢献活動を兼ねて企業のイメージアップを図ろうということだ。町に定期的に集まるサロンができると、区役所や市役所が交通費や菓子代程度の支援金を出すケースもある。

 サロンの活性化が図られている理由の1つは、サロンが高齢者の健康にとって非常に有益だからだ。特に認知症の予防にいいと言われている。年を取って人に会わず、外に出なくなると、社会的・人間的な刺激が減り、認知症の発生確率が大幅に高まる。事実、サロンに参加している高齢者と、参加していない高齢者の認知症の発症率を調べたところ、参加している高齢者の方が参加していない高齢者よりも認知症である率が3分の1と少なかった。サロンに行くようになると身なりに気をつけたり、化粧をしたりするようになるし、会話に入るにはニュースを見たり、世の中のことに興味を持ったりするためだ。

 外に出てあちこち歩くと歩数が増え、筋力が維持されるので老化予防にもいい。サロンで健康的な生活や介護に関する情報も得られるため、一石三鳥くらいになる。近所づきあいが増えるので、犯罪の発生率が下がるという調査結果も出た。もし何かあった時に誰か助けてくれる人がいるというのは、不安やうつが強まりがちな高齢者に大きな安心感を与えてくれる。サロンは超高齢社会の潤滑油でもあるのだ。

 日本のサロンは、韓国の敬老堂(お年寄りが集まって趣味などを楽しみながら過ごす建物)をベンチマーキンブしたものだ。約10年前、日本の高齢社会専攻教授が韓国の敬老堂文化を見学したこともあった。ところが、今は逆になった。韓国の敬老堂文化は廃れ、活発なのは地方くらいだ。高齢者対象のアンケート調査によると、敬老堂に行かない最も大きな理由は「私はそれほど年を取っていない」というものだった。敬老堂は名前からして変更する必要がありそうだ。小規模化・多種多様化して、都市型の集まりに進化させなければならないと思う。

 健康増進に関して我々は考えたこともなかったが、「高齢化の先輩」である日本では非常に強調されていることがある。それは社会参加だ。年を取っても人付き合いをして社会活動をしてこそ、身体的にも健康で、認知症も発症・進行しにくくなるという事実に気付いたのだそうだ。

 社会参加は難しいことではない。サロンに通ってお茶飲みながら会話をしたり、町のあちこちを歩き回ったりしながらおいしい店がどこにあるか、腕のいい美容師はどこにいるのか知るのが社会参加だ。地域のことをよく知り、社交性がある人の方が健康で長生きする。個人が長生きするには、暮らしている町の文化の影響が大きい。みんなの町が我が町になってこそ、みんな健康で長生きできるのだ。

東京=金哲中(キム・チョルジュン)医学専門記者

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