15年ぶりに権力の座に復帰したマレーシアのマハティール首相が「一帯一路」関連の発言で中国を刺激した。就任後初めて先月訪中したマハティール首相は、マレーシアの東海岸鉄道(ECRL)事業、パイプライン事業など一帯一路関連のプロジェクト3件を中止すると表明。そして、貧しい開発途上国を債務のわなに陥らせる一帯一路を「新植民地主義」と攻撃した。

 中国ではその直後から一帯一路に対する宣伝報道が増えた。習近平首席は一帯一路5周年座談会で、「一帯一路は域内国家がウィンウィンの関係を築き、運命共同体をつくろうとするものであり、各国が中国には異なる意図があるとおとしめているが、経済的覇権は追求しない」と述べた。中国の公式メディアはそれを大々的に報じた。中国中央テレビ(CCTV)は「アフリカの発展を支援する一帯一路を新植民地主義と非難するのは荒唐無稽だ」とするボツワナ大統領のインタビューを放映した。公式メディアを動員し、マハティール首相の発言に反論した格好だ。

 一帯一路は5月に行われたマレーシア総選挙で大きな争点だった。中でもECRLは注目されていた。ECRLはマレー半島北東部のタイ国境地域から東海岸の主要都市を経て、西部のマラッカ海峡沿岸にあるクラン港まで延びる総延長688キロメートル。経済的に遅れた東海岸地域を開発する狙いでナジブ前首相が推進した。2016年には総工費の85%を借り入れる条件で、中国国有企業の中国交通建設が工事契約を結び、昨年7月に起工式が行われた。

 ECRLの最大の問題点は経済性だ。当初70億ドル程度と予想されていた総工費は、契約時点で130億ドル以上に膨らんだ。最近には隠れた工事費用まで含めると、総工費が200億ドルに達するとの発表もあった。70億ドルでも経済性が不透明なのに、総工費が200億ドルまで膨らめば、持ちこたえられないというのがマハティール政権の主張だ。マレーシアの政府債務は昨年時点で2400億ドルで、国内総生産(GDP)の80%を超える。

 一時は韓国に匹敵する工業国だったマレーシアは、現在中進国のわなから脱出するための製造業の再建が急がれる。こうした中、急務とも言えず、中国の戦略的利益が大きい鉄道建設で借金漬けになることはできないというのがマハティール首相の判断だ。

 不透明な契約プロセスも論議を呼んだ。工事は国際入札を行わず、随意契約方式が採用された。1キロメートル当たりの工事費は3040万ドルで、2016年に着工したマレー半島南部グマス-ジョホールバル間の複線電化事業(総延長179キロメートル)の1320万ドルの2.3倍に達する。マレーシア国内では国営投資会社の資金数億ドルを横領したとして窮地に追い込まれたナジブ前首相がリベートを狙ったのではないかという疑惑が浮上している。

 一帯一路はアジア、欧州、アフリカにかけ、大規模にインフラを整備し、新シルクロード経済ベルトを構築するプロジェクトであり、習主席が力点を置いている。中国は韓国をはじめとする80カ国余りを引き入れ、アジアインフラ投資銀行(AIIB)を設立した。

 しかし、工事全体の89%を中国企業が受注するなど、中国偏重で推進されており、インフラ整備先の国が過度の負債で財政危機に追い込まれるなど多くの問題が浮上した。債務負担に耐えられなくなったスリランカは、ハンバントタ港の運営権を99年間にわたり中国に認めた。マレーシアでは腐敗した権力者がリベートを受け取っていた可能性まで指摘されている。

 中国は今月初め、アフリカ53カ国の首脳を北京に集め、600億ドルに達する大規模な経済支援を約束した。しかし、善意攻勢で一帯一路の素顔を隠せると考えているならば、中国政府の誤算だ。

崔有植(チェ・ユシク)中国専門記者

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