韓国国内には事実上、暴力行為が容認されている集団が存在する。12車線の道路を勝手に占拠し両側車線の通行を全て妨害したときも、住宅地の他人の家の前でデモを行ったときも、あるいは政府庁舎を占拠したときも、その後彼らが処罰を受けたというニュースは聞こえてこない。今の政府は一度処罰を受けた人間でもこの集団の関係者であれば次々と釈放し赦免する。法律に基づいてこの暴力集団を鎮圧してきた警察は、現政権が発足すると暴力警察などと批判されるようになった。誰もが暴力を振るえば刑務所行きだが、この集団だけは刑務所に行かなくてよいとなれば、それは政府から「暴力許可証」あるいは「暴力免許」を受けたということだ。世界で韓国にしかないこの暴力免許を持っているのは、誰もが知っているあの全国民主労働組合総連盟(民主労総)だ。民主労総に暴力を振るわれ、あるいは傍観する警察や機動隊の姿を見ると、この「暴力許可証」という言葉が決して誇張でないことを誰もが実感するだろう。

 民主労総の暴力免許とはいかなるものか。そのことを示す出来事はほぼ毎日、全国で同時多発的に起こっている。特に最近毎日のように目につくのは、民主労総によるソウル、京畿、大邱、昌原などの地方労働庁占拠だ。とりわけ大邱では21日にわたり占拠状態が続いたが、警察も機動隊も制圧に乗り出さなかった。民主労総は占拠をやめる際「おまえたちに罪がないからやめるのではない」と逆に労働庁に言い放った。韓国GMの民主労総系列の労働組合は社長室を占拠し、社長を追い出しては「この部屋を組合の事務所にする」と宣言した。彼らは部屋の備品を破壊し、副社長を脅迫した。会社は警察に訴えたが、3カ月後には再び占拠された。捜査と処罰がしっかりと行われていれば、このような事態が繰り返されることはなかっただろう。これが暴力許可証でなければなんと言えばよいのか。一方で民主労総は採用不正や横領なども行っている。政府が暴力を許可した団体に対し、個人はどのようにして自分を守ればよいのか。韓国GMの社長は自分で警備員を雇ったという。

 暴力免許は利権にもつながってくる。ある建設会社の関係者は「現場は民主労総に支配されている。民主労総の関係者を雇わなければ、まず出入り口の閉鎖から始まる。警察も検察も介入しない。やられるしかない。民主労総のクレーン運転手は現場の権力者だ。彼が作業をやめれば工事はストップするが、他の人間を使うことはできない。うちの会社は彼に賄賂を手渡して工事を行う。彼の1カ月の収入はおそらく社長よりも多いだろう」と語る。民主労総が20台以上の11トントラックを使い、慶尚南道梁山にあるソンウ・ハイテクで建設工事現場の出入り口を封鎖したのもその事例の一つだ。会社は6時間で音を上げ、民主労総の組合員を雇うという要求を受け入れた。

 暴力免許と公権力は徐々に一体化しつつある。警察はソンウ・ハイテクを封鎖した民主労総を取り締まらず、逆に「対話を求めていたのにこれに応じなかった」として会社側を攻めた。公権力は労働組合の暴力に対しては傍観するばかりだが、組合が会社を告発すれば直ちに捜査に乗り出す。民主労総は大検察庁(最高検察庁に相当)に対しても特定の人物らに対する捜査を求めてデモを行った。名指しされた人物たちは今後おそらく無事ではいられないだろう。

 2017年から今年4月までに民主労総の組合員は73万人から81万人に増え、現在は84万人以上と推定されている。増加のペースは韓国労働組合総連盟(韓国労総)の数倍だ。政府の指示で非正規職から正社員になると、その社員はほとんどが民主労総に新たに入るという。検察はサムスン労働組合結成妨害の容疑で会社を9回家宅捜索し、32人を起訴したが、この事実も社会への強いメッセージとなった。ポスコも同じような理由で告発された。サムスングループ労組とポスコ労組も最終的に民主労総の傘下に入るだろう。どこのグループに入れば有利かは誰でもすぐ分かるからだ。暴力免許はまさにその組織の力を示すものだ。

 処罰を恐れる必要なく暴力を行使できる人間が自らの責任を果たし、節制して他人に譲歩することは考えられない。現代自動車労働組合も民主労総系列だが、この会社の従業員は世界の自動車メーカーで給与は最も高いが生産性は最も低い。これでは企業の経営そのものが成り立たない。民主労総の暴力免許は韓国経済全体をも危機的状況に追い込もうとしている。

 つい先日、与党・共に民主党の洪永杓(ホン・ヨンピョ)院内代表は民主労総に対し「言葉が通じない。労働組合による建物の占拠は米国ではテロ行為だ」と発言した。また大統領府のイム・ジョンソク秘書室長は「民主労総と全教組(全国教職員労働組合)はもはや弱者ではない」と指摘した。民主労総に暴力免許を与えた側が民主労総を批判したことにはある意味新鮮さを感じる。しかし彼らがその言葉を実践に移し、民主労総の暴力を法律に基づいて処罰することはおそらくないだろう。

 民主労総は今の与党にとっては一種の実行部隊のようなものだ。共に民主党が政権を失い野党となれば、民主労総は保守政権に対して常に揺さぶりをかける。狂牛病(牛海綿状脳症・BSE)問題などで都心をまひ状態にし、過激な暴力を行使したのはその典型的なケースだ。また朴槿恵(パク・クンヘ)元大統領の弾劾を求めるキャンドル集会も、その中心には民主労総と全教組の存在があった。いかなるデモや抗議行動にもそれを引っ張る核が存在する。この核を中心にデモが大きくなり拡散すれば「市民による蜂起」となる。韓国で最も大きく力が強いデモの核には常に民主労総の存在がある。そのため今の与党が彼らと決別することは考えられない。民主労総と現政権はおそらく個別の問題では時に意見が対立しギクシャクすることもあるだろう。しかしこのままでは民主労総の暴力免許は最低でも5年、あるいは10年以上は有効期間が続くはずだ。

楊相勲(ヤン・サンフン)主筆

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