韓国最高の民間シンクタンクであり、一時は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の「経済アドバイザー」と呼ばれたサムスン経済研究所のウェブサイトは2013年10月から更新が止まった。週単位や月単位で絶え間なく掲載されていた研究リポートは姿を消した。対外的に発表していた経済成長率、金利、為替レートなどの予想指標も消えた。ウェブサイトだけを見ていると、閉鎖された研究所のようだが、約270人が働いている。昨年末の人事異動で車文中(チャ・ムンジュン)サムスン経済研究所長は副社長から社長へと昇進した。同研究所は5年前から外部活動を全てストップしたまま、サムスングループの系列企業が求める内部向けの研究のみを行っている。

■見えてこない韓国の民間ブレーン
 韓国経済の長期成長戦略とマクロ経済の運用に提言を行ってきた民間シンクタンクが企業の内部研究所に縮小されるか、存在感を失っている。1986年に「韓国版野村総研」を標榜して発足したサムスン経済研究所は、「通貨危機克服のための経済改革・政策方案」「国民所得2万ドル時代への道」といった国家的なアジェンダを提示してきた。韓米自由貿易協定(FTA)締結などに異論も唱え、国家の経済政策に介入し過ぎたという批判を受けるほどだった。2013年4月、韓国批判社会学会の学術大会では「スマート統治の登場:サムスン経済研究所の登場と影響力強化」という論文まで発表された。サムスン関係者は「一介の民間シンクタンクが国家政策に深く関与しているという外部の視線に対し、グループ首脳部が負担を感じ、対外活動を取りやめたと聞いている」と話した。

 別の民間経済シンクタンクも個別企業の経営に助言を行う「コンサルティング企業」と化した。マクロ経済や産業トレンドを分析し、政府の政策などに助言を行う役割は消え、すぐにでもカネになるグループ内部の事業を支援する「インハウス研究所」として機能が縮小されている。SK経営経済研究所も一般的な経済・産業分析機能をなくしてしばらくたつ。今年1月には政策研究室を経済研究室と統合した。SKは「グループ事業に関連し、最高経営責任者(CEO)や系列企業の社長団に経営上の分析情報を提供する役割に集中している」と説明した。農協経済研究所は2015年に廃止された。

 経済団体の民間シンクタンクも事情は一緒だ。全国経済人連合会(全経連)は昨年、革新案を発表し、政策研究機能を傘下の研究所である韓国経済研究院に移管し、同研究院のシンクタンク機能を強化するとした。しかし、韓国経済研究院の職員数が半分近く減るなど存在感を失っている。大韓商工会議所も今年5月、「研究機能を強化する」として、民間シンクタンク「持続成長イニシアチブ(SGI)」を設立したが、成果は上がっていないと評されている。

■企業内部のコンサルにだけ集中
 民間シンクタンクが国内外の経済動向の分析を怠れば、長期的に企業の競争力低下につながると指摘されている。匿名の10大グループ役員は「企業がマクロ経済動向に対する見通しもなく、経営リスクを分析、予測しても意味がない」と指摘した。

 特にサムスン経済研究所の場合、韓国社会が検討すべき問題を真っ先に提示するというプラスの役割を果たさなくなったことを惜しむ声が大きい。サムスン内部からも「研究所の外部向けリポートは国内最大企業サムスンの社会的貢献という評価もあった。実際にサービス産業中心論、魅力韓国論などが国家的な検討課題になったこともある。単純に『リスク』ととらえる最高経営陣の考えが問題だ」と指摘する声がある。ある民間シンクタンクの役員は「米ヘリテージ財団や日本の野村総研のような機関は、国際政治・経済に幅広い視野を提供し、一国だけでなく、全世界のシンクタンクとしての役割を果たしている。韓国の民間シンクタンクは以前は政府出資の研究機関による独走を防ぐためにバランスを取る役割を果たすなどプラスの機能も少なくなかった。今ではどこも消滅し、政府に対する異論を聞くことすら難しくなってきている」と懸念した。延世大経営学部のシン・ドンヨプ教授は「民間企業のシンクタンクが見通しや産業トレンドに対する分析を示したことが、韓国では陣営によって政治的な論議を呼び、企業が機能を縮小したものだ。民間シンクタンクの機能縮小は多様な意見と分析が示される窓口を閉ざすもので、結局は新たなアプローチを探るべき韓国経済には悪材料にほかならない」と指摘した。

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