「北朝鮮は韓国の希望通りにならないが、韓国は北朝鮮の思惑通り変わりつつある」

 今月11日にワシントンで保守系シンクタンク「企業研究所(AEI)」主催の討論会が開かれ、その席で対北朝鮮制裁の専門家として知られるジョシュア・スタントン弁護士がこのように発言した。討論会のテーマは「韓国の開かれた社会とその敵:右派権威主義から左派?」だった。左派という言葉にクエスチョンマークがあるが、いずれにしても「韓国に権威主義的な傾向が出てきた」と問題提起したことで、この討論会はワシントンで話題になった。

 AEIは「これまでは北朝鮮の核危機と韓米軍事同盟の二つが韓半島(朝鮮半島)に関する世界のニュースで支配的だった」と指摘した上で「ただし韓国はどうか」との質問を投げ掛けた。その上でAEIは「文在寅(ムン・ジェイン)政権はメディアを弾圧し、言論の自由を制限し、司法と公務員組織では党派性をあおっている」と主張した。

 AEIの北朝鮮研究専門家ニコラス・エバーシュタット氏の司会で進められたこの討論会には、タフツ大学のイ・ソンユン教授、民主主義守護財団のデービッド・マクスウェル上級研究員、パシフィック・フォーラムのタラ・オ研究員、そしてスタントン弁護士が参加した。いずれも保守系の識者や研究者たちだ。

 最初の討論テーマは「自由を制限する民主主義を目指して? 文在寅(ムン・ジェイン)政権下の韓国」だった。このようなテーマはこれまで北朝鮮の非核化ばかりが議論されてきたワシントンではほとんど聞いたことがない。参加者たちは文在寅政権だけでなく、朴槿恵(パク・クンヘ)政権や盧武鉉(ノ・ムヒョン)・金大中(キム・デジュン)政権における言論弾圧も取り上げた。

 その上で討論では「韓国政府は自由を制限する方向に進んでいるのか」あるいは「米国とは異なる韓国特有の政治的な現象か」について議論が交わされた。エバーシュタット氏は金大中・盧武鉉・文在寅政権をそれぞれ「太陽政策(宥和〈ゆうわ〉政策)1・2・3」に分類した。イ・ソンユン教授は「金大中・盧武鉉・文在寅政権下では新聞各紙はいつ口を閉じるべきかを理解している」と指摘した。

 スタントン弁護士は「トランプ政権と議会で働く知人たちは韓国について心配している」と明かした上で「韓国政府は非常に極端という言葉をよく聞く」とも伝えた。つまり「現実は明らかにそうなっていないにもかかわらず、文在寅政権は統一と平和を早く達成できると信じている」というのだ。

 マクスウェル氏は「北朝鮮が魅力攻勢や首脳会談をした場合でも、安全で平和な韓半島を築ける方向に金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が変化しているか確信は持てない」と述べた。タラ・オ氏は「民主主義だけでは不十分だ。多数が間違ったときに誰が少数を守るのか。それは法による支配だ」と指摘した。

 過去1年間、ワシントンにおける韓半島への関心は「北朝鮮の核問題」だけだった。米朝関係が厳しい対立から首脳会談へと一気に変化した時期、核問題という何よりも最優先すべき問題があったので、韓国国内にまで関心が向けられる余裕はなかった。また米国政府もシンクタンクも韓国に対する公の批判は控える傾向があった。韓米の認識のずれや亀裂が浮き彫りになることは、北朝鮮が意図するものに他ならなかったからだ。

 ところが今年10月にポンペオ国務長官が4回目の訪朝を行った後も米朝対話が進展しなかったため、ワシントンでは北核をテーマとする議論はほとんどなくなり、行われたとしても韓米両国の専門家による非公開の会議くらいだった。その一方でこれまで自制されてきた韓国政府に対する批判の声が徐々に高まってきたのだ。

 韓国の政治に詳しいワシントンのある専門家は先日「韓国の歴代政権の中で今ほど過敏な政権はなかった」と指摘した。この人物は「批判に対する過敏な反応を示すのは、自分たちが進める政策に自信がないことの表れだ」「政策の宣伝や目に見える外交ばかりを強化しても、政策の問題を補うことはできない」などとして遠回しに韓国政府を批判した。

 一方でワシントンの韓国大使館では今回の討論会を前にどう対応すべきか頭を痛めていたという。駐米大使館のチョン・ジュンホ公共外交公使は討論会で「誤解があるようだ」とした上で「韓国は光化門や韓国大統領府前で抗議行動が行われるほど、表現の自由は過去最高レベルで守られている」と反論した。チョン公使はさらに「国境なき記者団が発表した報道の自由ランキングで韓国は43位で、これは米国や日本よりも上位だ」とも主張した。

ワシントン=姜仁仙(カン・インソン)支局長

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