「韓国で発生するPM2.5などの大気汚染物質は中国から来た」とする韓国国内の主張に対し、中国政府が「ソウルのPM2.5は主に現地で排出されたもの」としてこれに正式に反論した。中国政府が韓中間の大気汚染問題について公開の場で反論するのはこれがはじめてだ。

 28日付の北京日報などによると、中国環境部(省に相当、以下同じ)報道官はこの日午前中に行われた定例会見で「韓国の大気汚染物質は中国から海を渡ってきた」とする韓国国内の主張について、3つの根拠をもとに否定した。

 報道官はまず「韓国における汚染物質と中国のスモッグとの関係についてはいくつか共有したい情報がある」「これを通じて現状に対する客観的な理解の一助にしたい」と前置きした。公表された観測データによると、中国ではここ数年の間に大気汚染が大きく改善しているが、ソウルのPM2.5濃度はほぼ変化ないか、逆にやや悪化しているという。また大気汚染物質の成分を分析したところ、PM2.5を悪化させる二酸化窒素の濃度は中国の北京や煙台、大連などよりもソウルの方が毎年高いという。

 また中国の専門家の分析によると、今年11月6-7日にソウルでは深刻な大気汚染が発生したが、11月はじめのこの時期に中国から韓国への大規模な大気の移動はなかったという。これらを根拠に報道官は「ソウルにおけるスモッグの主成分は現地で排出されたもの」「韓国の研究者も同じような結論に至ったとのニュースもある」と主張した。

 これに対して北京の韓国大使館関係者は「中国環境部報道官の主張は、中国に有利なデータばかりを都合良く切り貼りしたものだ」とした上で「米航空宇宙局(NASA)では中国の大気汚染物質が韓国に影響を及ぼしていることを裏付けるより普遍的な研究結果もある」と指摘する。この関係者は「中国はこれまで中国発の大気汚染物質に対する韓国からの抗議や懸念に対し、公に『科学的な研究が必要』と主張してきた」とした上で「最近、中国では大気汚染が大きく改善され、自信を持ったので、この問題を公に取り上げ始めたようだ」との見方を示した。この関係者は「大気汚染物質の長距離移動に関する韓国、中国、日本の共同研究の結果については、来年行われる3カ国環境相会議で明確な結論が出されるはずだ」ともコメントした。

 中国政府による一連の主張に対し、韓国環境部はこの日の昼過ぎには翻訳を行うなど、迅速に対応している。環境部の関係者は「中国と韓国は今後も引き続き大気汚染問題の解決に向け協力しなければならない。しかし外交的な発言を重視する中国のような国が今回のような主張をしたことにとまどっている」と述べ、中国の意図とは関係なく、中国政府の主張が拡大解釈されることに警戒を示した。この関係者はさらに「最近になって中国都市部の大気汚染が全体的に改善傾向にあるのは事実だが、PM2.5などが発生した時の韓国への影響は中国側も十分認識している」とも指摘した。

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