東京の歓楽街にあるパチンコは、最近でも平日は午後7時前から混雑する。ひしめき合って座る客のうち、マスクを着けている人は半数程度にすぎない。有楽町、神田、秋葉原などサラリーマンの流動人口が多い東京の繁華街のパチンコは、大部分は似たような状況だった。新型コロナの感染が拡大する前と特に何も変わっていない。

 玉を機械装置に投入して大当たりを狙うパチンコは、当たれば現金ではなく景品が渡されるため、賭博ではなくレジャーに分類される。全国の店舗数は1万60店(2018年基準)に達し、パチンコ人口は年間900万人と推定される。

 日本が「パチンコ王国」だということは、新型コロナウイルスによって全世界が震えている今、特に顕著になっている。日本もわが国のように野球・サッカーといったプロスポーツのリーグ開幕が延期になり、人気歌手のコンサートは中止になった。東京ディズニーランド、大阪のユニバーサルスタジオなどテーマパークも休業中だ。三越など有名デパートは今月中旬まで、首都圏店舗の週末の営業を諦めた。先月末から新型コロナウイルスの感染者が急増し、東京都の小池百合子都知事など首都圏の地方自治体トップらが不必要な外出を自粛するよう訴えた。

 しかし、パチンコだけはこれといって制裁のない「無風地帯」だ。保健当局は新型コロナウイルスの感染拡大初期からカラオケ、クラブ、麻雀場などを例に挙げて「換気が悪く人の集まる空間を避けるように」と勧告してきたが、パチンコは名前が挙がらなかった。感染経路不明の患者が急増し、最近再び東京都知事が「バーやナイトクラブの利用を控えてほしい」と要請したが、やはりパチンコには言及しなかった。

 日本では少し前「中国でマスクの原材料がなくなり、トイレットペーパーの生産に支障が出るだろう」というデマが広まり、全国の店舗からトイレットペーパーが一瞬のうちに消えたこともあった。オンラインショッピングモールでは依然としてトイレットペーパーの価格が以前より5倍以上高い。また、先日は東京各地のスーパーなどに市民が殺到し、冷凍食品、カップ麺、パンなどの食料品をカートに山積みにした。ここも伝染病に鈍感な社会ではないということだ。

 「なぜ、パチンコだけ?」という疑問が沸いてくる。野党議員らが「学校も休校しているというのに、なぜパチンコは休業対象ではないのか」と何度も政府に質問したが、菅義偉官房長官は「業界も自発的に努力している」と述べるにとどめた。「自発的努力」とは、消毒を徹底したりCMを自粛したりすることを指す。

 日本政府のパチンコ「庇護(ひご)」の背景としては「経済」のためだという主張が多い。2018年基準でパチンコ業界の総売上高はわが国の通貨で約240兆ウォン(約21兆円)に達する。同年の日本の防衛費総額の4倍に肉薄し、日本の実質GDP(国内総生産)の3.8%を占める数値だ。先月末まで2020年夏季五輪の正常開催を目指していた日本政府が、パチンコを休業させれば社会的不安が高まる恐れがあると考え、休業要請を見送ったとの見解もある。一部では、パチンコ利用者の間で政府の人気が下落することを恐れた政治的意図を疑う声もある。安倍内閣はそうでなくともコロナ対応の不十分さと、各種の政治的スキャンダルが原因で支持率が一時30%台まで落ち込んだ。安倍首相の主な支持層は男性だが、この支持層に人気の高いパチンコには手を触れたくないのだろう、という見方だ。

 東京都内のパチンコで出会った50代のサラリーマン、ヤノさんは「まだイタリアのように深刻な状況でもないのに、営業を取りやめる理由がない。国民のストレスが深刻になるだけだ」として、自粛を望まないと話した。20代の会社員ナガノさんも「病気にかかるのは個人の責任」だとして「満員の地下鉄もそのままではないか」と問い返した。

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