▲KBSが19日、「ニュース9」で誤報を認め、謝罪した画面。KBSは前日、「チャンネルAのイ・ドンジェ元記者と韓東勲検事長が共謀していたことが分かった」と報じた。/KBSキャプチャー

 東亜日報系のテレビ局、チャンネルAのイ・ドンジェ記者と韓東勲(ハン・ドンフン)検事長が盧武鉉(ノ・ムヒョン)財団の柳時敏(ユ・シミン)理事長によるシルラジェン事件への関与疑惑を取り上げようと共謀した会話記録を検察が入手しているとするKBSの報道が誤報と判明し、波紋が広がっている。

 問題の会話記録は今年2月13日、イ元記者が釜山高検に韓検事長(現法務研修院研究委員)を訪ねた際の会話を同席したチャンネルAのB記者が録音したもので、別名「釜山会話録」と呼ばれる。イ元記者の弁護人が19日、問題の会話内容を公表して反論すると、KBSは内容の一部が誤報だったと謝罪した。

 その後、法曹界からは20日、「公営放送が政治派閥的な目的で政治工作の前面に立っている」との批判が聞かれた。検察内部からはKBSに捜査上の機密を漏らした検察幹部の名前が取り沙汰され、「監察の必要性」が叫ばれている。KBSも現経営陣に批判的な公営労組が「小説を書いたのか?政権の太鼓持ちだったのか?」と題する声明を発表したことから、局内での事態収拾に躍起だ。

■KBS、「総選挙工作」強調しようとして誤報

 3月31日に始まったMBCニュースデスクの報道は「検察・メディアの癒着」が主体だったのに対し、KBSの18日の報道は「総選挙工作」疑惑を強調することに焦点が合わせられている。これはMBCに情報提供したC氏も主張していたもので、開かれた民主党の黄希錫(ファン・ヒソク)最高委員も加勢していた状況だった。

 「情報提供者X」だったC氏は時事ジャーナルのインタビューで「自分は時間にこだわらなかったが、チャンネルAは3月末、4月初めを強調した」と主張した。しかし、イ元記者側が19日に示したC氏との対話記録に内容は正反対だ。C氏が「4月の総選挙前に話せば、助けてもらえると思ったものだ」と述べたのに対し、イ元記者は「なぜ総選挙のことを考えるのか」「総選挙の前であれ後であれ関心はない」と話している。KBSは「釜山会話録」に「総選挙で野党が勝利すれば、尹錫悦(ユン・ソギョル)総長に追い風になると言うと、韓検事長からは支援するという言葉と励ましの言及があった」などと報じたが、翌日には誤報だったと認めた。

 ある法律専門家は「KBSまで加勢して『検察・メディアの癒着』を『総選挙への介入』という枠組みで決め付けようとして事故が起きたようだ」と指摘した。「視聴料で運営される公営放送が事実上『政治工作』に関与した」という批判も聞かれる。検察内部からは李盛潤(イ・ソンユン)ソウル中央地検長ら幹部が漏えい者として取り沙汰されている。監察の行方について、大検察庁は「何も決まっていない」との立場を示した。

 今回の事件を捜査しているソウル中央地検刑事1部は、事件を最初に報じたMBCのチャン・インス記者(44)から事情を聴いた。チャン記者が虚偽報道やチャンネルAの取材を妨害した疑いで告発されてから3カ月後の時点での出頭要請だった。

■KBS内部「政権の太鼓持ち」との批判

 KBS公営労組は声明で、「KBS報道本部の取材チームが1日後に屈辱的な『セルフ降伏宣言』を行った」とし、「取材されていないファクトをひとまず騒ぎ立ててみることが取材方針なのか」と批判した。非全国民主労働組合総連盟(民主労総)系のKBS第1労組も「会話記録を渡した取材源が果たして誰なのか、正体不明の会話記録が検証なく無理に報道に使われた背景を明らかにすべきだ」と要求した。KBS局員が使用する匿名掲示板には、「ミスではなく、尹総(尹錫悦検察総長)を飛ばすための報道だ」「事実確認もせず、政権のためになりふり構わず出しゃばる行為は実に衝撃的だ」といった批判が相次いだ。こうした内部の反発が容易には収まらないという見通しも聞かれる。鮮文大言論広告学部の黄懃(ファン・グン)教授は「問題の報道は複数のデスクを経ているはずだが、フィルターなしで報じられたことは、KBSの報道システムが政治派閥性に占領され、客観性を失っていることを示している」と述べた。

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