韓国の裁判所が1月8日、日本に対し「慰安婦被害者に対して賠償せよ」と判決した。日本政府は「裁判自体を受け入れない」とした。完全に勝訴した被害者も控訴する理由はない。一審判決は間もなく最終判決として確定する。

 慰安婦制度は違法だ。であるならば賠償は当然で、判決は正当なのか? 過去史、とりわけ慰安婦問題が出てくると「韓国人らしさ」を要求される。韓国人なら被害者に従わなければならない。他の意見は許されない。

 世の中には逆のケースが多い。ポーランドは韓国以上に外部勢力からひどい目に遭った。ドイツ軍の民間人虐殺被害者が自国の裁判所に、ドイツを相手取って賠償を請求した。2010年、ポーランド最高裁は原告敗訴を確定させた。「裁判管轄権がない」というのが理由だ。フランスの裁判所は3度の判決で、ドイツに連行された自国民の賠償請求訴訟を全て棄却した。スロバキア、ベルギー、セルビアも自国民の敗訴を言い渡した。ギリシャでは、虐殺被害者の勝訴を宣言した最高裁の判決を特別最高裁が覆して原告敗訴とした。これらの裁判所は被害者の痛みから目を背け、違法と加害者ドイツの肩を持ったのだろうか。

 こんな仮定をしてみよう。ベトナム国民が、韓国軍の虐殺被害者だとしてベトナム国内の裁判所に韓国を相手取って賠償を請求した。ベトナムの裁判所は一方的に韓国を法廷に立たせ、原告勝訴を言い渡し、韓国政府の財産を差し押さえた。韓国はこの判決を受け入れることができるか。虐殺行為が正当だと主張しているわけではない。一国が他国を裁くことはできないという主権平等の原理を言っているのだ。

 国際慣習法は、国の権力行為について、他国の裁判管轄権から免除(国家免除)されると規定する。主権平等を保ち、国家間紛争を防ごうという仕掛けだ。ポーランド、フランスなどが自国民敗訴の判決を下したのも、虐殺、拉致、強制労働を容認したからではない。自分の権利を保障してもらうために他人の権利を保障するというものだ。

 こう聞く人がいるだろう。「ならば国家責任は消えるのか」と。正義は司法の占有物ではない。司法が駄目なら外交が、外交が駄目なら民間もできる。世界の戦後和解のやり方だ。韓国だけがこれを無視する。

 判決文を見ると、韓国の裁判所の論理は明確だ。強行規範に違反した反人権的犯罪は国際慣習法において例外だというものだ。学界でこの論理が支持を得つつあるのは事実だ。だが世界の法廷では依然として傍流の論理だ。

 イタリアは韓国に先駆け、異例にもこの論理を強制労働の賠償判決に適用した。その代わり、本当に激しい論争だった。2000年の一審判決から2014年の憲法裁判所の違憲決定まで、敗訴と勝訴を繰り返し、裁判だけで7回に及んだ。国際法廷にまで行った。2012年、国際司法裁判所は「強行規範違反と国家免除は別個の事案」だとして、イタリアの裁判所が国際法の義務に違反したと判決した。これが世界の法廷における支配的な論理だ。韓国はこの論理を、地方裁判所の40代の判事が「完全勝訴」決定で一発で否定した。

 底辺には大衆の感情がある。相手が日本ならたたけばたたくほど支持する。判事は英雄扱いされる。こうした環境の中で、国際窃盗団が日本から盗んできた盗品を返さなくてもいいという判決が出た。14-16世紀に倭寇が略奪したものかもしれないという推定を、法廷で証拠にする。21世紀の韓国の裁判所の判決だ。日本相手であれば一事不再理、時効、協定、証拠、判例、国際慣習法の壁まで簡単に越えていく。

 スウェーデンのある法学者は、強行規範の論理の危険性を「パンドラの箱」になぞらえた。韓国の裁判所は、日本を万能の鍵として「国家免除」というパンドラの箱のふたを一息に開け放った。今後どんなことが起こるだろうか。

 金大中(キム・デジュン)政権は、6・25戦争中に老斤里で米軍によって複数の民間人が犠牲になったと2001年に発表した。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は2003年、「済州4・3事件の発生と鎮圧の過程から米軍政は自由ではあり得ない」とした。盧政権がつくった真実和解委員会は、米軍を大邱暴動の加害者と規定し、1948年の麗水・順天事件鎮圧作戦を米軍がコントロールしたと発表した。委員会が明らかにした6・25当時の米軍による民間人殺傷事件は249件だ。重大事案について、委員会は「戦争犯罪に該当し、国家責任が発生する」と明示した。当時明らかにされなかった米軍の事件202件は、文在寅(ムン・ジェイン)政権の第2期真実和解委員会に持ち越されている。

 「強行規範が全ての法の上位にある」という法の論理は、日本だけに適用され得ない。韓国社会の特定勢力が、米国を避けるように放っておきはしないだろう。米国は国家免除を徹底して保障する国だ。こんな米国を、韓国の法廷に立たせ、韓国国内にある米国政府の財産を差し押さえてみよ。くみしやすい日本を相手に行くところまで行く韓国の裁判所の冒険主義は、完全に異なる段階に入っている。

鮮于鉦(ソンウ・ジョン)副局長

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