韓日W杯を機に定着「エスカレーター1列乗り」で事故増加

 今月16日午後、ソウルの地下鉄5号線、光化門駅。地下のホームへ下りるエスカレーターの進行方向右側には、仕事帰りのサラリーマンたちが1列に並び、左側を一部のサラリーマンたちが急いで下っていた。「エスカレーターは急いで移動するための設備ではありません。2列に並んで安全に利用しましょう」という立て看板があったが、30分間で、エスカレーターの左側に立つ人は1人もいなかった。左は「急ぐ人」、右は「あまり急がない人」専用となっていた。

このような「1列乗り」は1998年に一部の市民団体が、2002年のワールドカップを前に「成熟したエスカレーター文化を示そう」というキャンペーンを行ったのを機に広まった。しかし、1列乗りキャンペーンが行われた後、事故が目に見えて増加し、エスカレーターの故障件数も増加したことから、韓国昇降機安全管理院と地下鉄運営機関は、2007年から「エスカレーター2列乗り」運動を展開している。

 ソウル都市鉄道公社(地下鉄5―8号線を運営)の関係者は「2列乗りを広めるために職員たちもわざわざ左側に立ったりしている。しかし後ろから上がってくる人がいるため落ち着かず、時には文句を言われることもある」と話した。パク・サンチャンさん(30)=会社員=は「2列乗りキャンペーンをしていると知り、時々左側に立ってみるが、後ろからの冷たい視線を感じ、立っていることができない」と話した。

 今年5月、ソウル市銅雀区のある地下鉄駅で、エスカレーターを歩いて降りていたAさん(74)が、滑って後ろに転倒し、肋骨(ろっこつ)2本を折る重傷を負った。Aさんは片手に傘を持ち、もう片方の手で手すりにつかまって降りていたところだった。昨年8月には、大邱広域市寿城区のある地下鉄駅で、エスカレーターを歩いて上っていたBさん(79)が、バランスを崩して転倒し、右腕を骨折した。

 昇降機安全管理院によると、1列乗りの文化が定着する直前の2002年には、エスカレーター関連の事故は4件にすぎなかったが、04年に9件、06年に43件、08年に108件、10年には109件と増加している。8年で27倍以上も増加したわけだ。同期間にエスカレーター自体は9178台から2万2571台へと2.5倍の増加にとどまっている。

 ソウル・メトロ(地下鉄1―4号線)など、関連機関の関係者は、1列乗りの慣習が事故増加に影響を及ぼしていると分析している。左側を歩いたり、走ったりする人たちは手すりにきちんとつかまっていないため、転倒しやすく、転倒した際に服の裾がエスカレーターの間に挟まり事故につながるという。昇降機安全管理院の関係者は「エスカレーターの階段の高さは20センチで、一般の非常階段(15センチ)よりも高い」として「歩いたり走ったりすると、転倒する確率がその分高くなる」と話している。

 エスカレーターの故障も増加傾向を示している。ソウル・メトロは「右側ばかりに荷重がかかるため、偏って摩耗が生じ、機械の寿命が短くなった。エスカレーターを短期間で新しくするとその分税金が余計に掛かる」と話している。関連企業は、偏摩耗現象により、20―25年程度だったエスカレーターの寿命が、少なくとも2年程度短くなるとみている。ソウル都市鉄道公社は、今月23日から来月31日まで、6年目にしていまだに定着しない「2列乗り集中宣伝キャンペーン」を再び展開する予定だ。

ヤン・スンシク記者
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  • ▲今月19日午後、ソウルの地下鉄・光化門駅のエスカレーターで。「2列乗り」を呼び掛ける案内看板が立っているが、利用者たちは依然として左側を空けて乗っている。/写真=キム・ジホ客員記者
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