【コラム】論文盗作に対する弁明

 90年代末、夜間大学院に通っていた。期末試験の際、試験監督が席をはずすと、数人が本を取り出し答えを書いた。最初に本を取りだしたのは名前が広く知られている運動家だった。道徳性を「他人を刺す刃物」としてだけ利用する運動家を何人も見てきたはずだが、こうした厚かましい様子を見てあきれた。

 4学期目に入ると論文の話をした。「何から写せばいいか分からない」という冗談半分、本気半分の話が飛び交った。勉強に熱中していたわけでもなく、適当に学位を取ればむしろ大学の評判を落とすかもしれないと思い、論文は書かなかった。だからといって道徳性がそれほど立派だったわけではない。そのとき論文を書いていたら「修士論文でノーベル賞を取るつもりなの? 適当に(他の人のを)写しなよ」という雰囲気に巻き込まれていただろう。避けたものは大きかった。

 「どれくらいつらいのか、青春よ」。このような内容の偽物の自己啓発本が氾濫する時代に、違う声を挙げる人が登場した。「ぶつぶつ言うな。私はもっと大変だった」「夢をかなえるために君は一体何をしたのか」と訴え掛ける度胸のある女性、スター講師の金美敬(キム・ミギョン)氏だ。数日前、本紙は金氏が夜間大学院に通っていたときに書いた論文に数カ所の盗作があったと報じた。

 翌日、金氏は公式の立場を明らかにした。「学界の基準に合わせられなかったことは誤っていたが、良心までむやみに売ったわけではなかった」とした。発表文を要約すると「過ちはあったが、意図的ではなかった。朝鮮日報の報道は全体を見ずに一部だけ見ているものだ」という内容だった。普段の威勢のいい語調に比べて余裕がないように感じられる。そのような立場では誰でも同じかもしれないが、金美敬氏らしい弁明ではなかった。普段堂々と「出世した田舎の女」と自分を呼んでいるように「田舎の女が欲を出してしまった。申し訳ない」ときっぱり言った方がよかったのではないだろうか。

朴垠柱(パク・ウンジュ)文化部長
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