【萬物相】日本人が名付けた韓国在来種の学名

【萬物相】日本人が名付けた韓国在来種の学名

 「ケーブルアル花」(アツモリソウ)という品のない名前の花がある。「ケーブルアル」はイヌの睾丸(こうがん)という意味で、花の形がイヌのそれに似ているということから付けられた。植物学者も名前を呼ぶのがきまり悪くて「しびん花」「福袋蘭(ラン)」などの別名を使う。しかし、一般の人々の間では今も「ケーブルアル花」という名前でよく知られている。花の名前には最初にそう呼んだ人の気持ちが込められている。ツバメのようにスラリとしているので「ツバメ花」(スミレ)、かんでみたら苦かったから「スムバグィ」(「スム」は苦いという意味=ニガナ)。同じ種類の花でも各国で呼び名が違うのは、花に対する文化が違うからだ。

 だが、国際植物学会議が1867年に作った「国際植物命名法規約(ICBN)」に従うとなると話が違ってくる。この規約の原則は、世界の全ての植物には学術的に一つの名前「学名」しか存在しないということだ。学名にはその植物が属する系統や植物の世界に初めて紹介した人物の名前が入っている。一度ICBNに掲載されれば、戸籍名のように変更は難しい。

 韓国初の民間植物園「千里浦樹木園」の庭には、創設者で元米兵のカール・ミラー(韓国名:ミン・ビョンガル)氏)の胸像があり、その隣に木が1本植えてある。樹木園の植物約1万5000種の中から選ばれたこの木は「莞島ホランカシナム」(莞島ヒイラギ)だ。ミラー氏は1978年に全羅南道・莞島で自生植物の調査を実施し、この木を発見した。ICBNに木の名前を登録する際、原産地の「Wando(莞島)」と自身の名前「Miller(ミラー)」を入れた。子どもがいなかったミラー氏は「植物学者にとっては一生に一度あるかないかの栄誉」と言い、死ぬまで莞島ヒイラギを自分の子どものように愛したという。

 韓国にだけ自生する在来種の植物は400種以上といわれている。このうち「モデミ草」(モデミソウ)、「ソムノルグィ」(シマユキワリソウ)、「ポンレコリ草」(ホウライクワガタソウ)など、韓国の在来種だが学名に日本人の発見者の名前が入っている植物は半数を上回る。韓国が近代的な植物分類法や学名というものを知る前に、帝国主義時代の日本の学者たちが先にICBNに学名を登録したためだ。だが、さらにひどい例は、韓国固有の植物の系統を示す際に、朝鮮侵略の元凶となった人物たちの名前を使っているものがあることだろう。

 「文化財を元に戻す会」代表の慧門(ヘムン)僧侶と植物学者・歴史学者・芸術家らが駐朝鮮初代日本公使だった花房義質の名前を学名に入れた「金剛チョロン花」(金剛ホタルブクロ)、初代朝鮮総督で武断統治を行った寺内正毅の名前を学名に入れた「平壌知母」(ハナスゲの一種)について、学名の修正に乗り出した。簡単なことではないかもしれない。しかし、帝国主義時代の日本が韓国固有の名前や文化に勝手に手を加えた歴史は正しく知るべきだ。植物の名前・町の名前の変更から創氏改名に至るまで。そうしたことは一つや二つにとどまらない。

金泰翼(キム・テイク)論説委員
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