【萬物相】韓国から海外に遠征する文化財泥棒

【萬物相】韓国から海外に遠征する文化財泥棒

 1967年10月、ソウル市内の徳寿宮美術館に展示されていた高句麗時代の仏像(国宝第119号)が白昼に消えた。捜査本部が設置されマスコミが騒ぎ出すと、犯人は市内の繁華街・明洞の喫茶店に「生活苦で過ちを犯した。すぐに返す」とメモを残した。そして、夜中に文化財管理局長の家に「漢江鉄橋16番橋と17番橋の間の川岸にビニール袋に包まれて埋められているので探してほしい」と電話をした。文化財管理局長は妻と一緒に車を運転して向かった。川岸を20センチほど掘ると、仏像があった。夫妻は夜0時近くに漢江の橋の下で仏像を拝んだという。

 仏像が無事に戻り、犯人も過ちに気付いたので、まずは一件落着と言ってもいいだろう。文化財当局も泥棒も無邪気というか、少し間が抜けていた時代だった。だが、中国・吉林省集安市で消えた高句麗時代の古墳壁画を考えると、今でも胸が痛む。古墳の内部は1500年前へとさかのぼれるタイムマシンだった。美しい服を着て外出する女性、楽器を弾く人、相撲をする男…。生き生きとした暮らしの様子を描いた壁画が2000年5月、チェーンソーで丸ごと切り取られていった。韓国の古美術商の指図を受けた地元住民が犯した行為だったとされる。

 それから少し経った後、ソウル市内の骨董(こっとう)品街・仁寺洞には、集安市から持ち込まれたという30×30センチ四方の高句麗壁画の破片が出回った。警察の捜査が始まると、壁画の破片は隠され、国内で流通させた犯人もまだ捕まっていない。一部には「中国が東北工程(中国の歴史見直し作業)により高句麗を中国史の一部だったと主張している中、高句麗の壁画を取り戻せたのだから、良かったではないか」という人もいた。

 韓国各地の寺や書院、宗家で盗みを働いていた文化財泥棒が海外に狙いを付けてかなり経つ。1990年、兵庫県神戸市内にある収集家の家に凶器を持った人物が入り、数億ウォン(1億ウォン=約1000万円)の高麗青磁・朝鮮白磁を奪った。2004年には同県内の寺を回り国宝級の高麗仏画を盗んだ。犯人たちが供述した犯行動機はもっともらしかった。「そうしなければ、略奪された文化財を取り戻す方法がなかった」と言ったのだ。

 長崎県対馬の寺で統一新羅時代の仏像を盗んだ韓国窃盗団がおととい、日本で逮捕された。一昨年に韓国人窃盗団が高麗時代の仏像を盗んだのに続き、対馬だけで2回目だ。「愛国的犯行」だと言おうと何と言おうと盗みは盗みだ。日本が植民地時代に略奪していった数万点の文化財はまだ戻って来ていない。窃盗団の行為は国に泥を塗り、文化財を取り戻そうという真摯(しんし)な努力に水を差すものだ。窃盗団を厳しく処分してこそ、日本が盗み、奪っていった文化財を明確かつ堂々と返還要求できる道徳的な力となる。

金泰翼(キム・テイク)論説委員
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