抗日映画『鳴梁』、中国版でカットされた台詞とは

中国版では李舜臣将軍の台詞カット
「党への忠誠」に反すると判断か

抗日映画『鳴梁』、中国版でカットされた台詞とは

 「思うに将となった者の義は忠によるもので、その忠は王ではなく、民に向かうべきだ」

 これは朝鮮水軍が日本水軍を相手に大勝を収めた「鳴梁海戦」(1597年)を描いた韓国映画『鳴梁』に登場する李舜臣(イ・スンシン)将軍の代表的な台詞だ。映画製作会社は「民に忠誠を尽くせ」という台詞入りのポスターまで配布した。しかし、12日に中国で封切られた同作品(中国での作品名・鳴梁海戦)ではその台詞がカットされていることが判明した。

 中国の映画配給会社関係者は15日、「中国の観客の感情に合わせるため、上映時間を約20分短縮して編集した。その過程でその台詞がカットされたと聞いている」と語った。一方、日本軍(倭軍)を撃破する部分はほとんどカットされていないことが分かった。このため、中国版の『鳴梁』をめぐっては、抗日シーンだけが残ったとの指摘が聞かれる。

 配給会社関係者は「中国当局は映画の編集過程には介入しなかった」と説明した。しかし、中国当局は外国映画の映像だけでなく、字幕まで徹底して検閲し、上映を許可するため、台詞カットは中国の国情を考慮した結果とみられる。

 中国が当初11月28日に予定していた『鳴梁』の封切り日を南京大虐殺追悼記念日(12月13日)の直前に変更したことも意図的なものではないかとされている。第2次世界大戦当時、南京市民30万人が日本軍に虐殺された苦痛の歴史を映画を通じて少しでも慰めようとしたのではないかとの見方だ。

 しかし、『鳴梁』で語られる忠は、習近平国家主席が「習皇帝」と呼ばれるほど権力が集中し、共産党一党独裁を強化されている状況ではデリケートなテーマだ。忠が共産党や国家を向かうのではなく、民のためのものだという主張は、中国当局には不都合だったのではないかとみられている。

 中国で『鳴梁』を見た観客は主に抗日シーンに拍手を送っている。ある観客は「日本の船が撃沈されるシーンで血が躍るような興奮を感じた」と評した。「生きて帰るまじという覇気が感じられた」との感想も聞かれた。しかし、「民に対する忠」のために奮闘する李舜臣将軍に対する評価は見当たらなかった。

北京=アン・ヨンヒョン特派員
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連ニュース
関連フォト
1 / 1

left

  • 抗日映画『鳴梁』、中国版でカットされた台詞とは

right

あわせて読みたい