【コラム】家族を崩壊させる韓国の教育システム

 「大学修学能力試験」のいい加減さをめぐる論争は、韓国の教育の現実を見直す機会となった。オバマ米大統領、世界銀行のジム・ヨン・キム総裁ら海外の著名人は韓国の教育の優秀性を称賛するが、それには同意し難い。経済協力開発機構(OECD)による学習到達度調査(PISA)で韓国の学生が優秀な成績を収めたのを見てそう言ったのかもしれないが、実情を知っているのかは疑問だ。優れた成績の裏には、青少年の自殺率と高齢者の貧困率が世界1位という陰の部分も存在する。

 韓国経済の成長には教育熱の高さが大きな役割を果たした。しかし、いつからか教育は経済発展のけん引車となるどころか、障害になってしまった。まず塾や習い事の費用の高さが家計を圧迫している。家計支出に占める塾や習い事の費用は昨年現在で14.5%で、先進国と比べ最大9倍に達する。教育費のうち80%以上が塾や習い事の費用の費用だ。

 韓国で子どもを産み、結婚させるまでにかかる費用は1人当たり3億5528万ウォン(約3370万円)だ。このうち、初級学校(小学校)から大学までの期間にかかる費用が2億4000万ウォン(約2550万円)に達する。その資金の相当部分は借金で賄われる。最近の韓国銀行(中央銀行)の調査で、1年後に借金が増えると答えた人の20%が教育費を理由に挙げた。

 経済学における生涯周期の仮説によれば、年代別の消費性向は所得が低い20-30代で高く、相対的に所得が高い40-50代になると低下する。貯蓄が増えるためだ。その後、高齢者になると再び高まり、消費性向のグラフはU字を描く。しかし、韓国はW型という特異な形を示す。壮年層が教育費負担のせいで貯蓄できない結果、高齢者の貧困問題が生まれる。

 こうした状況をいつまで個人の選択の領域だと放置しておくのか。高過ぎる塾や習い事の費用は、望んで選択しているわけではなかろう。大学の入試を複雑化して、中身を推定不可能にし、学習塾のマーケティングが威力を発揮するように仕向けた政府の過ちだ。全国民を無謀な投資に追い込み、老後の貧困リスクに直面させる現在の教育システムは改革が求められる。経済革新3カ年計画、農業革新3カ年計画は存在するのに、経済革新3カ年計画はなぜ立てられないのか理解できない。

 PISAで韓国の学生の成績は世界最高水準だが、学習時間を反映して再計算した1時間当たり点数はOECD加盟国で最下位圏だ。費用対効果が低く、あくまで搾り出された点数だと言える。そんな実力では競争力を持つことは難しい。能力を見分けることもできない大学修学能力試験の問題に正解して、名門大学に入ったとしても、就職率は50%に満たない。

 保護者は今のような無理な教育投資を続けるべきかどうか冷静に考える必要がある。ある研究論文によると、中学校以降は塾通いに100万ウォン余計に使うよりは、自習時間を1時間増やす方が成績向上効果が高いという。両親の所得と子どもの接触頻度の相関関係を国別に調べた分析研究によると、韓国の子どもたちは両親の所得が高いほど接触が多く、所得が低いと接触を絶つ傾向が目立った。塾通いの費用を工面するために老後の準備を放棄することは、自分自身だけでなく、家族関係を崩壊させることにつながる。

金洪秀(キム・ホンス)経済部次長
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