しかし韓国政府内部には、米国が要請してきた場合、在韓米軍にTHAADを配備することは結局避けられない、というコンセンサスがかなり形成されているという。北朝鮮による4回目の核実験が迫っているという見方が提起されるなど、核・ミサイルの脅威がますます高まっている状況下、韓国の防衛力の水準をアップグレートする必要があるというわけだ。
ある消息筋は「巨額の予算を要するTHAADを韓国の金で購入するというのなら話は別だが、米軍へのTHAAD配備は、直ちに反対すべき名分も実利もない」と語った。これにより韓国政府は、THAAD配備に関してできる限り「スピード調整」を行う一方、軍事的側面で中国の懸念を払拭(ふっしょく)できる論理を積極的に開発しているという。米国は既に、京畿道平沢などをTHAADの配備候補地として検討しており、有事の際、韓半島に展開する米軍の増援兵力にもTHAADを組み込んだ。
戦略的あいまいさを堅持するという韓国大統領府(青瓦台)の方針に対し、韓国軍の一角からは、控え目にではあるが懸念と不満の声も上がっている。韓国軍のある消息筋は「戦略的あいまいさが本当に必要なときもあるが、安全保障・生存に関する問題では、周辺国の要求に対し、韓国の立場を明確にする必要があると思う。周辺国の顔色をうかがうあまり、時期を逸するのではないかと懸念している」と語った。THAADをめぐる議論が激しくなったことを受け、韓国国防部は「THAAD問題は国防部が軍事的側面から判断する事案であって、政界などでは議論を自制してほしいという趣旨の公開要請を行う案も検討中」と語った。