シンガポールの実利主義外交は、韓半島(朝鮮半島)でも見られた。朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が自らリー元首相の国葬に参列するなど、韓国の「友邦」として知られるシンガポールだが、「友邦の主敵」との理由で北朝鮮を仲間外れにしていたならば、「わが人民の親愛なる友人、リー・クアンユー閣下が惜しくも亡くなられた」という真心のこもった弔電が北朝鮮から届くだろうか。
この小さな国の大きな外交力を見ていると、大国のはさまで「THAAD(米国の高高度ミサイルによる防衛システム)」や「AIIB(アジアインフラ投資銀行)」のような問題に振り回されている韓国の外交はみすぼらしく見える。これは現政権の力不足だけのせいではない。列強の利益がぶつかり、北朝鮮の脅威も存在し続けている現状にあって、シンガポールのような綱渡り外交を繰り広げるのはもともと無理だったともいえる。
問題はこれからだ。東西冷戦から米国の一人勝ち、中国の急浮上と、激動が続く国際情勢が、今後どうなるかは予断を許さない。各国は今後さらに、国益を懸けてそろばんをはじき、激しい競争を繰り広げるだろう。「長い友人」や「宿敵」といった言葉は意味をなさなくなるに違いない。韓国もシンガポールのバランス感覚、実利主義外交を分析し、その長所を学ぶべき時が来ている。