【コラム】「なりたい職業1位=教師」 韓国社会の危機

 ところが、実際には必ずしもそうではない。ソウル地域にある高校の校長は「最近の教師はみな優秀なので、勉強ができない生徒の気持ちを理解できないことがある」と言った。親も自慢の優等生が教師になるため、教師の共感力が下がっているというのだ。「元優等生たちが教師を目指すのも、定年の保障や年金給付といった職業の安定性を選んだからでは」と批判する声も多い。

 そのためか、知識だけを問う現在の教師採用システムを改善しようという声が上がっている。大邱市教育庁が今年から教師任用試験に「人文学面接」の導入を決めたのもこのためだ。オ・ドンギ大邱市教育監(教育庁〈教育委員会に相当〉トップ)は「他人への配慮や理解が不足している人、教師としての情熱がない人は教壇に立ってはならない」と語った。

 しかも、実力のある教師が任用されているにもかかわらず、私教育(予備校・塾・家庭教師)の勢いもますます強まっている。政府が先月発表した「私教育費調査」を見ると、しばらく変化がほとんどなかった1人当たりの私教費が再び増え始めていることが分かった。政府は忘れたころに「私教育対策」を打ち出すが、「塾の方が学校より教え方が上手」という認識が生徒や保護者、さらには教師にまで浸透しているのではないだろうか。

 韓国であらゆる分野がそうであるように、教育分野でも光復(日本の統治からの開放)後の70年間で奇跡を起こしてきた。1人当たりの国民所得が100ドル(現在のレートで約1万2000円)にもならなかった時代は午前クラスと午後クラスの入れ替え制にし、それでもギュウギュウ詰めになりながら教室を使っていたが、学校の先生は希望だった。今では1人当たりの国民所得が3万ドル(約360万円)目前に迫り、教育予算は55兆ウォン(約5兆9000億円)という時代になったのに、肝心の先生があまりよく見えてこない。教師の人気が急上昇し、優秀な人材が教壇に立つようになった今こそ、教壇の危機について考えるべきだろう。

社会政策部=安晳培(アン・ソクペ)次長
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