【コラム】阿部信行の「予言」

 翁山師は、寺刹令で朝鮮の僧侶を汚した初代総督・寺内正毅と、韓日仏教強制併合を画策した第7代総督・南次郎の悪だくみを獅子吼(ししく=説法)で頓挫させた満空大禅師のことを話した際、阿部信行の予言を思い出したのだ。

 私は「武装闘争だけでなく、満空大禅師のような独立運動も認めるべきだ」という翁山師の考えを報道することで、拘束・服役という形式に縛られた報勲当局の姿勢を変える発展的議論が起こるものと期待していたが、その結果、目撃したのはサイバー空間にあふれる「おとしめ合い」だった。「一部の僧侶は進歩左派」という言葉が独立運動と何の関係があるのか、「日本の仏教は支持されているが、韓国の仏教はでたらめ」という指摘は満空大禅師と何の関係があるのか、「日本による植民地時代の暗い記憶をほじくり返すのはもうやめよう」という言葉がなぜ出てくるのか、まったく理解できない。

 韓国社会で最も恐ろしい言葉は「親日派」だ。「アカ」や「親米の犬」が受ける辱めなどおふざけのレベルで、その比ではない。李承晩(イ・スンマン)、朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領や6・25戦争(朝鮮戦争)の英雄ペク・ソンヨプ将軍でさえ、今もその「わな」にあえいでいるのを、あの世の阿部はどう思っているのだろうか。

 翁山師に「69年前に亡くなった満空大禅師が独立有功者になったら、何かメリットがあるか」と聞いてみた。翁山師は「何もないが、日本大使館前に彼らを叱る満空大禅師像を立ててほしい」と言った。そんな翁山師に「建物を数十軒建てるよりも大きな仏事をなさっている」と励ましの声を掛けた。だが、今この目に映るのは、70年前の阿部が言ったとされる、韓国人を鋭く見抜いた予言通りの光景だ。

文甲植(ムン・ガプシク)先任記者
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