国情院の通信傍受は合法か、違法か

自殺した職員による資料の削除、違法性の有無が争点

 韓国の情報機関、国家情報院(国情院)の「ハッキングプログラム購入および違法盗聴」疑惑によって引き起こされた波紋がますます大きくなる中、検察も水面下で忙しく動いている。まだ捜査に乗り出すほどの違法行為は明らかになっていないが、政界や市民団体などから告発状が出たら、捜査に着手せざるを得ないからだ。

 ソウル中央地検の関係者は20日「まだ検察が急いで捜査に入る状況ではない」と述べつつも「通常、大型事件は外部で告発状を出して検察に来るケースが多いので、それに備えた法律検討をやっている」と語った。

 もし捜査が始まった場合、国情院が適法な手続きにのっとって通信傍受をやっていたのか、また18日に自ら命を絶った45歳の国情院職員が資料を削除したことの違法性はどうか、という点に捜査が集中するとの見方が浮上している。

 まず、国の情報機関たる国情院が誰かの通信を傍受したからといって、それが無条件に違法というわけではない。通信秘密保護法第7条が「国家安保のための通信制限措置」を明示しているからだ。通信制限措置とは、一定の要件を備えた場合に、対象者の通信を傍受することを意味する。

 しかし、法に明示された手続きを守らずに傍受した場合は、違法になる。国家安全保障のための通信傍受には、大きく分けて、自国民を対象にする場合と外国人を対象にする場合がある。自国民の通信を傍受する場合、高等裁判所首席部長判事の許可を得なければならない。国情院は、イタリアのセキュリティー関連業者からハッキングプログラムを買ったことは認めたものの、安全保障用にソフトウエアを買い入れただけであって、国民に対しては使っていないと主張している。

 国情院の主張が正しいとすると、今度は外国人の通信を傍受する際の規定を見てみる必要がある。通信秘密保護法第7条第1項第2号は、北朝鮮や外国人などが国家安全保障に脅威を加えると予想されるとき、大統領の承認を得て監聴(通信傍受)できると定めている。大統領の承認があれば、外国人や北朝鮮スパイの疑いがある人物などに対する通信傍受は合法というわけだ。国会情報委員会で幹事を務める与党セヌリ党のイ・チョルウ議員は20日「情報・捜査当局は4カ月に1度、北朝鮮籍の人物をはじめ、外国人に対する通信傍受許可を大統領から受けている」と語った。外国人に対する通信傍受に関しては、国情院だけでなく全世界の情報機関が、自国の安全保障のために同様の活動を行っているという。

 しかし、国情院が高裁首席部長判事の許可を得ずに自国民を盗聴したり、大統領の承認なく外国人やスパイ容疑者などを盗聴したりしていた場合は違法になり、捜査が避けられない見込みだ。通信秘密保護法は「規定に違反して監聴した場合、1年以上10年以下の懲役と5年以下の資格停止に処する」と定めている。

 自殺した国情院職員が上官の指示で資料を削除したことが明らかになった場合も、問題になる。ほかの人物がこの職員に資料の削除などを指示していた場合、証拠隠滅教唆容疑の適用もあり得る。

ソク・ナムジュン記者 , チェ・ジェフン記者
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