中年になった日本の引きこもり、「家庭内ヤクザ」に

 年老いた両親が、引きこもった子どもの面倒を見られなくなった場合、子どもは自宅に閉じこもったまま餓死するか、食べ物を求めて家出し、事件を起こすようになる可能性もある。一方、耐えられなくなった家族が子どもに暴力を振るうケースもある。引きこもりの原因は依然として不透明だ。Aさんの両親は経済的には余裕があったが、夫婦関係は冷え込んでいた。父親(73)は「妻が息子を甘やかしたからこうなった」と主張し、母親(72)は「夫が無関心だったせいで息子がひねくれた」と言い張った。

 Aさんは両親にとって、「息子」ではなく恐怖の対象だった。Aさんは多くの規則を作った。「家の中で飯が食えるのは俺だけだ。俺が起きている間は誰も部屋に入ってくるな。毎日、俺がメールをした通りに買い物して、冷蔵庫に入れておけ」。このような規則に反すると暴言を浴びせ、時折殴打したり、刃物を振り回したりした。両親は息子の部屋に入ろうという気も起きなかった。早くから専門家に相談しなかった理由について、移送スタッフの一人は「体裁を気にしていたようだ」と話した。見るに見かねたAさんの兄が昨年12月、押川さんの元を訪れ、助けを求めた。

 韓国の専門家たちは「他人事ではない」と指摘する。韓国の引きこもりは20万-30万人程度と推定されている。2012年には引きこもりによる犯罪が相次いだ。4年間引きこもっていた男(当時27歳)が、訳もなくスーパーの女性店主を刃物で切り付け、重傷を負わせた。また、ソウル市冠岳区新林洞の考試院(受験生向けの貸し部屋)に数年間引きこもっていた男(当時30歳)も、かつての職場の同僚を訪ね、刃物で切り付けた。

 押川さんたちはAさんの両親を家の外に出させた後、Aさんが一人でいる家の中に入った。パンツ1枚で朝食をとっていたAさんは一切抵抗できなかった。押川さんはAさんに向き合い、「今のままの生活をしていたら、健康によくないし、命を守れない。病院に行こう」と説得し、民間の救急者に乗せた。Aさんはその際にも、気が抜けた様子でこうつぶやいていた。「消さなきゃいけないのに。消さなきゃいけないのに。俺の携帯を見るんじゃない」

東京=金秀恵(キム・スヘ)特派員
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  • ▲今月15日午前、東京近郊の小都市で、18年間自分の部屋に引きこもっていたAさん(41)を、精神科病院に入院させるための業務が行われた。押川剛さん(48)が率いる移送スタッフたちは、パンツ1枚で家にいたAさんに近付いた。Aさんが刃物を振り回す事態に備え、スタッフたちは首に厚いプロテクターを巻いていた(写真左)。その後、服を着せてストレッチャーに乗せたAさんをスタッフたちが民間の救急車に乗せた。警察官もその様子を見守っていた(写真右)。写真=金秀恵(キム・スヘ)特派員

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