【寄稿】過剰な民族主義で生徒にうそを教える韓国史教科書

行き過ぎた民族主義に染まり証拠を無視する古代史
現代史では問題がさらに深刻
極度に閉鎖的な認識や古い解釈の教科書で生徒を指導

 東アジアの状況はどうだったか。独ソ不可侵条約によりソ連は日本とも同じような妥協策を取った。1941年4月に日本と中立条約を締結し、日本がアジア太平洋を思う存分侵略できるようにしたのだ。同年6月22日にヒトラーがソ連に侵攻すると、ソ連はやむなく連合国と協力せざるを得ない状況に追い込まれた。しかしアジア太平洋で日本が12月7日に真珠湾攻撃を行い、米国など連合国が日本と戦争状態に入った中でも、ソ連は日本と密約を結んでいた。戦争に必要な物資を日本にひそかに輸出し利益を得ていたのだ。45年8月6日に米国が広島に原子爆弾を投下し、太平洋戦争の勝敗がほぼ決すると、ソ連はそれから2日後の8日に日本に宣戦布告し、翌日には軍事攻撃を開始。直後に韓半島北部に進駐すると、ソ連の軍服に大尉の階級章を付けた金日成(キム・イルソン)とその一派を平壌に連れてきた。もちろん将来の手下として使う目的だった。

 ところが韓国の歴史教科書はこれらの歴史的事実にほぼ、あるいは全く言及せず「ソ連=第2次大戦における最大の貢献者」「ソ連軍=解放軍」などとする虚偽の考え方にとらわれ、うそを生徒たちに教えてきた。後に東欧諸国で共産主義体制が崩壊して冷戦が終息し、未公開の文書や事実が次々と公表され、ロシアもそれらを認めたことで現代史解釈は新たな次元に入った。ところが不幸にも韓国の歴史研究者たちは極度に閉鎖的な思考や認識にとらわれ、これらの歴史的事実を受け入れないだけでなく、逆にかつての古い歴史観に一層とらわれている。これらは韓国史をはじめとする歴史教科書が持つさまざまな問題の一つの側面にすぎない。これでは果たして歴史学界による現代史の見方と、民間の歴史家による古代史とどちらの方がエセ歴史学だろうか。「歴史学界の方がまだまし」とは決して言えないのではないか。今後政治家たちが教科書問題について何か言いたくなれば、まずはこれらの問題を明確に認識し行動するのが基本的な道理であり順序ではないだろうか。

姜圭炯(カン・ギュヒョン)明知大学教授(現代史)
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