半世紀前の韓国市内バス、老人に席を譲らないと罰金だった

半世紀前の韓国市内バス、老人に席を譲らないと罰金だった

 1973年のこと。市内バスで通勤していた当時70歳の医師が、手帳に毎日、特別な記録を付けていた。その日バスで座席を譲られたかどうか、譲られたときはどういう年齢・階層の乗客が好意を示したかをたんねんに記した。9カ月にわたって調査した結果、962回バスに乗り、その間に座席を譲られた回数は320回だった。3回に1回にもならなかった。最もよく座席を譲ってくれる人は26-30歳の男性で、最も見て見ぬふりをするのは女子中学生だった。席を譲ってくれた人は、ジャンパー姿の市民(65.8%)が大多数を占め、スーツ姿(31.1%)は少なかった。さらに医師は、この調査を通して、「恋愛する若い男女」は高齢者が前に立っていても決して立ち上がらないという事実も確認した。70歳の老人の調査は、高齢者にあまり座席を譲ろうとしない世間のありさまに警告を発しようとするものだった。

 市内バスが市民の足になっていった1950年代以降、高齢者や弱者に見ないふりをして座っている若者に対する批判の声が、新聞にしばしば登場する。ある市民は「老人が立っているにもかかわらず、若々しい学生らが堂々と座っているのを見ていると、憎悪が生ずる」という表現まで使った。60-70年代の韓国において、バスの座席を譲るのは若者の義務だった。車内には「老人や子供に席を譲りましょう」という標語が掲げられ、案内嬢もそうした内容を乗客に向けて熱心に叫んだ。最高権力者までもが、この問題を取り上げた。77年、当時の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領は、市内バスに乗ったおばあさんと障害のある学生の座席譲りをめぐる美談を「外国人もうらやむ敬老思想」の事例と紹介。「今後、こういう良い面は大きく拡大すべき」と強調した。さらには67年2月、警察が「席を譲らない行為」を8大非道徳的行為の一つと規定し、罰金を科するとして取り締まりを行ったこともある(67年2月1日付本紙)。

金明煥(キム・ミョンファン)史料研究室長
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