【社説】「空白の7時間」は弾劾理由に含めるべきでない

 韓国の野党3党は7日、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領に対する弾劾訴追案の中に「セウォル号沈没時の空白の7時間」を含めることを決めた。与党セヌリ党非主流派の非親朴はこの部分を削除するよう求めていたが、野党側がこれを拒否したのだ。野党が3日に提出した弾劾訴追案の中には「旅客船『セウォル号』が沈没しようとする国家的危機の際に朴大統領は何もせず、憲法に定められた生命権の保障に違反した」という趣旨の内容が記載されている。

 「セウォル号の空白の7時間」についてはこれまで「大統領府でみこが儀式をしていた」「朴大統領はプロポフォール(鎮静剤)の投与を受けて寝ていた」「整形手術を受けていた」などさまざまな指摘があり、昨日は朴大統領が髪をセットしていたことが報じられ問題となった。これについては90分もかかったとの指摘がある一方で、大統領府は20分しかかからなかったと反論した。これまで崔順実(チェ・スンシル)被告についてメディアが報じた疑惑のほとんどが事実だったことを考えると、セウォル号が沈没した当日、空白の7時間における朴大統領の行動に関する数々の報道も、どれも全く可能性がないとは言えないだろう。しかしこれらの疑惑の指摘は弾劾訴追の本質からどう考えてもずれている。

 セウォル号沈没は船舶の違法な拡張・改造、貨物の過積載、平衡水の不足、貨物のずさんな固定、運航の未熟さなどさまざまな原因があった。また事故が報じられた時は、すでに救助成功の大きな鍵となるいわゆるゴールデンタイムも過ぎていた。仮に朴大統領がその時間に現場にいたとしても、事態が好転することもなかったはずだ。そのため事故当日、大統領としてやるべきことをやったかどうかはまた別の問題だ。ところが朴大統領のミスが原因で乗客が犠牲になったなどと主張すれば、これは「非難のための非難」になってしまうだろう。

 弾劾訴追案は法的文書であるため、弾劾の理由には明確な根拠がなければならない。ちなみにセウォル号関連の理由以外は全て、崔順実被告らに対する検察の起訴状に基づいたものだが、セウォル号関連の理由付けには何の根拠もない。そのためこのような弾劾訴追案がそのまま押し切られてしまえば、それはもう超法規的な発想であり行動と言わざるを得ず、立法活動を行うはずの国会議員としてはあるまじき行為だ。今は崔順実問題を追い風として、議員らはこのような超法規的な言動を何らためらおうとしない。例えば「弾劾されても辞任させよ」「弾劾の採決の際、国会内でキャンドル集会をやらせよ」「崔順実を(法的に無理なら)強制的に聴聞会(証人喚問)の場に立たせよ」などと言い出しているのは他でもない、国会議員たちだ。

 おそらく明日には弾劾という法的手続きが始まるだろう。セウォル号問題は弾劾訴追案に入れるのではなく、特別検事の捜査に委ねるべき問題であり、捜査はすでに始まっている。これもさほど長い時間はかからないはずだ。

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