【社説】金正男殺害と金九殺害・金大中拉致を同列に扱う人々

 丁氏は先月も1994年の米朝ジュネーブ合意、また2005年の9・19共同声明について「米国が破棄した」と主張した。しかし実際この二つの合意は北朝鮮が核兵器開発の凍結とその検証を拒否したことで破棄されたものだ。前駐英北朝鮮公使で韓国に亡命したテ・ヨンホ氏の証言通り、北朝鮮は最初から核兵器を放棄する考えなどなかったため、これまでの対話は全てが北朝鮮にとって単なる欺瞞(ぎまん)戦術だった。ところが丁氏は今なお「北朝鮮は核兵器を放棄する考えがある」と信じている。これだけだまされ続けても北朝鮮の善意に対する丁氏の信頼は揺るがないようだ。丁氏は米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」についても「北朝鮮のミサイル攻撃から大韓民国を守るものではなく、米国が自らの覇権を守るための単なる道具にすぎない」と主張している。

 文在寅氏の国政諮問団「10年の力委員会」の共同委員長という地位は、外交・安全保障政策について文氏に助言する立場にあるはずだ。ちなみに文氏は丁氏の今回の発言について「正確には聞いていないが、何か特別な意味があるとは考えていない」とコメントしている。その文氏は金正恩氏による今回の金正男氏殺害について「絶対に許されない人倫にもとる犯罪行為」と述べたが、丁氏の発言については特に問題視しないのだろうか。

 丁氏のような考えを持つタイプの人間は、韓国国内では相手を非常に激しく攻撃し非難するが、人間を人間扱いしない北朝鮮の暴力集団に対してはいかなる場合でも理解を示そうとする。しかも今やその当人が近く再び政権を握り、外交・安全保障政策を左右する可能性まで高まっている。そうなれば彼らは北朝鮮を擁護する自らの主張をこれまで以上に堂々と語るようになるだろう。

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