【コラム】ある韓国民族主義者の涙

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 記者が知るある高齢の学者が昨年秋に遺書を書いたそうだ。例年になく厳しい暑さが猛威を振るった夏が過ぎると、学者は「死はいつやってくるか分からない」とふと考えるようになったという。学者は遺書の中で「葬儀はせず、墓地も立てず、火葬後の遺骨は故郷の裏山にまきなさい」と書いた。年を取ると死も怖くはなくなるそうだ。また自分が死ぬに当たって名誉とかいったものにも全く未練も関心もないという。ただこの民族が一寸先も見えない闇の中を今後どう進んでいくか、ただそのことだけが気掛かりなのだそうだ。

 この話を聞いた時、記者は太極旗集会に参加してきた数多くの高齢者の姿が思い浮かんだ。時に雪や雨交じりの強い風が吹く中、白髪の老人たちはこの4カ月間、不自由な体を引きずりながら広場に集まり、太極旗を振り続けた。大統領罷免の決定が下された瞬間、中には胸を打ち気を失った人も多く、数人はその場で命を落とした。犠牲者が出たニュースがテレビの小さな字幕に映し出されたその日、キャンドル集会の側では勝利の歓声と共に爆竹が鳴り響いていた。

 太極旗集会の参加者は何をそこまで強く求めていたのだろうか。キャンドル集会の主催者たちが言うように、彼らは単に権力を擁護する守旧派だったのか。あるいは朴正熙(パク・チョンヒ)神話を盲目的に信じる時代錯誤の人間たちだったのだろうか。

 太極旗集会には70代以上の高齢者が数多く参加していたが、彼らは国の分断、戦争、貧困、産業化を全てその身で実際に経験してきた世代であり、国によって特別な恩恵を受けたとか、あるいは既得権者などとは到底言えない人たちばかりだ。朴槿恵(パク・クンヘ)前大統領が何らかの間違いを犯したとしても、それが国を崩壊させるほどではないという点で彼らは一致していた。安全保障に対する危機感も特に大きかった。北朝鮮・朝鮮労働党の金正恩(キム・ジョンウン)委員長を指導者として認め、米国よりも先に北朝鮮に行くなどと堂々と公言する政治家よりも、むしろ朴槿恵の方がましだと考えた。米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」をめぐる韓半島(朝鮮半島)情勢も危機的状況だ。ところが大統領は罷免され、同時に彼らの希望や信念も押しつぶされた。

文化部=金潤徳(キム・ユンドク)次長
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