【コラム】ある韓国民族主義者の涙

 憲法裁判所が決定を下した後の耳触りの良い「国民統合」は、彼らの涙と嘆きの声を受け入れることから始めるべきではなかったか。憲法裁判所所長代行を務めた李貞美(イ・ジョンミ)裁判官(当時)が読み上げたように、われわれは今誰もが「歴史の法廷に立つ当事者」として、互いに涙を拭き手を取り合って立ち上がるべきだった。ところが次の大統領選挙の有力候補者や野党はそのことに関心さえ示していない。彼らは無情な大家のように今すぐ大統領府から立ち去るよう朴前大統領に要求し、占領軍のように政府の全ての政策を中止するよう脅迫めいた物言いで求めた。さらに米国のニクソン元大統領のように「憲法裁判所の決定に承服する」とのメッセージを出せと畳み掛けた。検察の捜査を控えた朴前大統領にとって、承服はただちに自らの有罪を認める結果になることを当然彼らは知っていた。

 国民大統合はその座から追われた元大統領ではなく、勝者を自任する彼らの側から始めるべきことだ。憲法裁判所の決定が出た直後、政界が一つとなって朴前大統領の赦免を求めていれば、国の格は一段階上がったはずだ。任期中に罷免されるという最も厳しい仕打ちを受けた大統領をさらに法廷にまで立たせ、太極旗集会の参加者たちに追い打ちをかけているようでは、今後も報復の政治は際限なく続いていくだろう。

 最初に言及した老学者は「われわれは国が分裂する時にしか民族や正義を語らない。そのため民族という言葉は古くさいもの、反逆的なものへと歪曲(わいきょく)された」と嘆き、その上で「それでも私は大韓民国主義者だ」と語る彼の目は潤んでいた。老学者は最後に「数々の苦難を乗り越えてここまで来た。最後は良くなるだろう。私の人生の最後の価値基準は、それが大韓民国のためになるかどうかにある」と言い残した。

 「積弊の清算」という美名を使い、相手への敵視や憎悪をあおるこの時代の政治家にぜひとも聞いてほしい言葉だ。

文化部=金潤徳(キム・ユンドク)次長
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