【社説】脱北者・太永浩元公使に迫る金正恩の影

 北朝鮮の太永浩(テ・ヨンホ)元駐英公使が23日、国家情報院傘下の国家安保戦略研究院諮問委員を辞任した。研究院側は太氏が「100%自発的に辞意を表明した」と説明するが、それを信じる国民は少ないはずだ。太氏は最近、北朝鮮の政権の実情を紹介する本を出版して以降、北朝鮮から「人間のくず」だと攻撃を受けてきた。北は南北会談を中止させる理由の一つとして太氏の一件を挙げた。北朝鮮の要求ならば何でも聞いている韓国政府が太氏に対してどんな立場なのかは自明だ。共に民主党は「太元公使は韓半島(朝鮮半島)の平和ムードを壊すことが目標なのか」と批判した。それが現政権の本音そのものだろう。

 2016年に亡命した太氏は、これまで知られていなかった北朝鮮の政権内部の動向について、貴重な情報を韓国国民にもたらした。太氏が予測したように、北朝鮮は昨年まで核とミサイルで韓半島の危険指数を高め、今年から急変した様子を見せている。金正恩(キム・ジョンウン)にとって、目の上のたんこぶのような人物であることは十分分かるが、どうして韓国でもそんな立場に置かれなければならないのか。命懸けで金氏王朝の体制から脱出し、自由大韓民国に来てみたところで、至る所に金正恩の影が迫ってくるとすれば、韓国とはいったいどんな社会なのだろうか。

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