【コラム】自国の拉致被害者を見捨てない日本、見捨てた韓国

拉致被害者10万人を見捨てた韓国、17人を諦めない日本

 韓国がもともとこのような国だったわけではない。1964年、朝鮮日報は「北朝鮮による(韓国人)拉致被害者の送還を求める百万人署名運動」を展開した。51日間で101万1980人が署名した。計11箱、重さ303キロの署名簿が国連本部に届けられた。こうした努力が政府レベルで現在まで続いていれば、先日の板門店での南北首脳会談で、韓国人拉致被害者の送還問題が議題に上ったはずだ。ところが、その日の会談で触れられたのは韓国人拉致被害者ではなく、日本人の拉致問題だった。理由は単純だ。日本が問題を主張する一方で、韓国は沈黙していたからだ。

 人はきちんとした暮らしができてこそ道理を守ることができるといわれる。しかし、現代の韓国社会で北朝鮮に拉致された国民に対する関心の程度は、経済的な豊かさと同じようには上昇しなかった。むしろ逆だ。「韓国人拉致問題に伴う南北の緊張が、せっかく築き上げた豊かさを台無しにするかもしれない」という利己的な感情が社会全体に作用しているためだと思う。そのようなエゴが、国民を見捨てる習慣をつくり上げたのだ。

 10万人の韓国人拉致被害者とその家族、3万人の脱北者は、政権の変化や時代の変化に伴って、たびたび豊かさや平和のための犠牲になってきた。首脳会談に先立ち米国は北朝鮮に拘束されていた米国人を連れ戻した。首脳会談の合意文にも、68年前の戦争捕虜の送還と行方不明者の遺骨発掘という文言を盛り込んだ。日本は国交正常化の条件として、北朝鮮の核・ミサイル問題と共に、北朝鮮による日本人拉致問題の解決を絶えず訴えている。ところが、いったい何の弱みを握られているのか、韓国の状況は正反対だ。北朝鮮から、脱北した女性従業員の送還を求められている。韓国政府はこの状況を異常だとすら考えていない。

 米朝の首脳は今回、北朝鮮の非核化と体制保証を約束した。しかし、うわべだけの約束に近かった。北朝鮮は米国との書面での約束だけで、韓国に物理的な見返りを求めるだろう。飢えに苦しむ北朝鮮が、今すぐ支援を期待できる相手は現実的に考えて韓国だけだ。しかし、「タダ」はない。拉致被害者と家族にとっては今回が事実上の最後のチャンスだ。現政府が大韓民国の政府なら、以前と同様に離散家族再会の際に韓国人拉致被害者を何人か含める形を取るようにして、韓国人拉致問題を終わらせないでほしい。拉致された人々も、苦難の人生の中で国と政府の価値を感じるチャンスを一度ぐらい与えられるべきだ。

社会部= 鮮于鉦(ソンウ・ジョン)部長
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