W杯:「負けた選手への配慮不足」 文氏夫妻の更衣室訪問が物議

文大統領、メキシコ戦直後に選手のロッカールームを激励訪問
泣いている孫興民をカメラの前に引っ張り出す
夫人の同行も物議「性的な配慮を欠いている」

 サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会で24日、F組第2戦の韓国とメキシコの試合が終了した直後、韓国代表のロッカールームにスーツ姿の一行が押し寄せた。試合を観戦した文在寅(ムン・ジェイン)大統領と夫人の金正淑(キム・ジョンスク)氏、そして随行員たちだった。このとき韓国はメキシコに1-2で破れ、1次リーグ2連敗となって決勝トーナメント(決勝T)進出が極めて困難になっていたため、ロッカールームの雰囲気は沈鬱だった。

■文大統領「孫興民はどこだ?」

 文大統領が入ってくると、申台竜(シン・テヨン)監督を筆頭にコーチ陣、選手団が一列に並んだ。「よく頑張った」。金正淑氏が、この日2回の決定的ミスを犯したDF張賢秀(チャン・ヒョンス、26)=FC東京=の肩をたたいた。軍隊チームの尚武に所属する金民友(キム・ミヌ、28)は「一等兵、金民友!」と敬礼した。着替え中だった主将の奇誠庸(キ・ソンヨン、29)=スウォンジー=はシャツを着ることもできないまま文大統領と握手した。

 その後、文大統領は選手たちを立たせたまま「皆とても悔しいと思うが、ベストを尽くした。それでいい。最後の瞬間まで諦めない姿を見せてくれた。皆で声を合わせよう。ファイティング!」と演説した。

 終了間際に1点を決めた孫興民(ソン・フンミン、25)=トッテナム=は列の中に加われなかった。シャツを脱いだままロッカールームの片隅で泣いていた。すると文大統領が「孫興民はどこへ行った?」と探し始めた。

 文大統領は孫興民の手をつかんでカメラの前に連れていき、右手を挙げる「ファイティング」のポーズを取らせた。それでも孫興民は泣き続けた。文大統領は、凍り付いた表情の車範根(チャ・ボムグン)元韓国代表監督に「先輩なのだから励ましの言葉をかけてあげないと」と言って笑った。

 韓国大統領府(青瓦台)は4分間にわたる「激励訪問」の様子を写真にまとめて公式フェイスブックに掲載した。写真には「海外で行われているW杯の韓国代表の試合を大統領が直接観戦し、現場で選手団を激励したのは今回が初めて」とコメントを付けた。政府が運営するKTV国民放送でも紹介した。孫興民の「ロッカールームの涙」はこうして一般に公開された。

■「選手たちは大統領が来ることを知らなかった可能性も」

 青瓦台の意図とは裏腹に「激励訪問」の写真は逆効果となった。インターネット上では「負けて沈んでいる選手たちのロッカールームを訪れるのは適切なのか」「泣いている選手まで引っ張って来て見世物にしなければならなかったのか」「文大統領が『老害』に思える」などの指摘が相次いだのだ。

 この日、選手たちは大統領夫妻のロッカールーム訪問を事前に知らされていなかったという。大韓サッカー協会の関係者は「選手たちは大統領夫妻が来ることを知らなかったようだ。なぜなら、試合に必要な内容ではないからだ」と話した。

 「選手たちにも感情があるだろうに、負けた直後に一列に並びたいとは思わないだろう。大統領なら泣いている人間を連れ回して写真を撮ってもいいのか。激励訪問の動画からも選手団の悲惨な雰囲気が伝わってくるのに…どうしてもそうしなければならなかったのだろうか」。会社員のチョンさん(31)はこう話した。

 また、女性である金正淑氏が男子選手のロッカールームに同行したことをめぐって、配慮に欠けるとの指摘もある。ロッカールームはスポーツ選手が着替えるためのスペースであり、裸になっている場合もある。選手たちが事前に大統領夫妻の訪問を知らされていなかったとすれば、突然の来訪に困惑する可能性がある。大学生のチェさん(28)は「ロッカールームは選手たちのプライベートな空間なのに、女性の金氏が選手の同意も無しに突然入っていったのだとしたら、それは間違っている」として「シャツを脱いでいる選手、泣いている選手の前でカメラのシャッターが何度も押される様子を見ると、こちらが恥ずかしくなる」と話した。

 一方で大統領夫妻を擁護する意見もある。就職準備中のオムさん(28)は「もしロッカールームに行かなければ『負けたから大統領が選手たちを激励しなかった』とけちをつけられたと思う」と話した。また「大統領はロッカールームに写真を撮りに行ったのではなく、重要な外交問題を処理するためにロシアに行ったのだ」という声も一部にはある。

コ・ソンミン記者 , イ・ダビ記者
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